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「――?」
どういう意味だろう?と首を捻る俺をじっと見上げてパティスが続ける。
「せっかくの貴方との時間を邪魔されたくないの」
俺の目を真正面からひたと見据えるパティスの濡れ光るブラウン・アイを見て、俺はどうしようもなく彼女のことを愛しいと思った。
パティスに握られたままの手を、逆に握り返してグイッと抱き寄せると、彼女を腕の中に閉じ込める。
甘い香りをまとうパティスのフワフワの金髪に顔を埋めるようにして、俺は小さく「バカだな」とつぶやいた。
本当にパティスに伝えたかったのは、もちろんそんな言葉じゃないし、もしも俺がこんな呪われた身の上じゃなければ、今頃きっと何も言わずに彼女に口付けていただろう。
どうして俺は吸血鬼で、パティスは人間なんだろう?と、考えてもどうしようもならないことを、今更のように思ってしまった。
パティスには俺みたいに太陽を避けるような生き方ではなく、陽の光の下を堂々と歩いて欲しい。
俺が俺の望むようにパティスを扱うと言うことは、彼女から昼間を奪うと言うことだから。
だから俺はパティスが望むようなことを、彼女には何ひとつしてやれないのだ。
グッと自分の欲望を抑えると、俺はパティスの額に唇が触れるだけの軽いキスを落とした。
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