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パティスの前で丸っきり気の利かない男を演じるのは嫌だったし、かと言って彼女の望み通り俺とそっくりの使い魔を生み出すのも癪に障った。
だから、その使い魔がゆっくりと目を開け、彼女の前へと進み出たときのパティスの落胆した顔を見た俺は、正直複雑な思いがしたのだ。
彼女は自分の意図するところを全て汲んでくれなかった俺を、一瞬がっかりした目で見遣ったが、可哀想にその不満を素直に口に出来るような性格ではない。
俺と同じでどこかひねくれたところのある奴だから、次の瞬間には全ての不平を飲み込んで、にこりと笑顔を見せた。
「……有難う、ブレイズ」
心の底からそうは思ってないくせに……。
そう解っていて「どういたしまして」と応える俺は酷い男だろうか。
そして……そんな俺たちの目論見なんて知らぬ気に佇むこの使い魔は、今なにを思っているだろう。
「……えっと……」
俺が彼の方を見たことで、パティスの意識ももう一度そちらへ向いた。
「何て……呼べばいい……?」
そう、呟いた彼女に、生まれたばかりの使い魔が恭しく頭を垂れる。
「貴女様のお好きなように」
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