25人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
パティスは結局、その場で直ぐに使い魔の名前を決められなかった。
しばらく黙って彼のほうを見ていたけれど、申し訳なさそうに眉根を寄せると、
「もうちょっと考えさせてもらえる?」
そう言った。
そんなパティスに対して、使い魔は「構いませんよ」と笑顔で返すと、紳士然としたお辞儀をした。
そんな彼らのやり取りを見ていて、俺は何だか無性に苛立ってくるのを感じていた。いや、彼ら、というのには語弊があるか。
正確に言えば、俺は使い魔の、俺とは違う素直で慇懃な態度に対して苛ついていたのだ。
正直、俺は眼前の使い魔のようにパティスに対して真っ直ぐな態度を取ることが出来ない。
いつも、心で思っていることと裏腹の態度で接してしまって、彼女を怒らせてしまうのだ。
コイツのように思ったままを口に出し、またそれに見合った態度を取れたなら、どんなにいいだろう。
そんな風に思ってから、俺は思わず苦笑した。
(コイツをこういう風に創ったのは俺自身か――)
最初のコメントを投稿しよう!