君の想いを汲んでやれない

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 有言実行タイプのパティスは、その提案から一週間と空けない内に、街で大きな紙を二枚入手してきた。  広げればスッポリと彼女自身が収まってしまう紙の上で、いつもよりも多少苦戦しつつも、綺麗に「やっこさん」という人型の折り紙を創り上げた。 「ね、このぐらいの大きさならブレイズのさじ加減ひとつで難なく普通の人間サイズに出来ちゃうわよね?」  実際、ナスターだって元の折り紙の大きさは三十センチにも満たなかった。  しかし俺がゴールデンレトリバーをイメージして命を吹き込んだため、使い魔として動き回っている彼は、傍目には普通にその犬種として見えているはずだ。  今、パティスが持っている「やっこさん」は、二つの紙でそれぞれ上半身と下半身を作って組み合わせただけあって、ナスターの時よりも更に四十センチばかり大きな仕上りになっている。 「ああ」  それを見て、内心もともとの大きさは関係ないんだけどな……と思った俺だったが、折角パティスが張り切って大きな紙を買ってきたことを思うとさすがに言えなかった。
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