第1話 願いポスト

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第1話 願いポスト

 大正ロマンを感じさせる温泉街のさらに奥。人一人が通れる道の先に、滝の流れ落ちる音が心地よく響き渡る、開けた場所がある。そこは、きれいに整えられた芝生が張られていて、中央には、太陽の光が差し込んで、スポットライトのように照らされている丸型の「黒い郵便ポスト」がある。ここには、ある願望を持った人間たちが、どこから聞いたかは分からないが、集まってくる。理由は、この黒い郵便ポストに手紙を投函すると、自分の願いが叶うと言われていることだ。  手紙を書くときのルールは1つだけ。お礼の手紙を書くこと。それ以外のルールは特になし。手紙にする紙は何でもいいし、ボールペンでもマジックでもいい。色も関係ない。さらに、宛先は人間や会社の名前じゃなくてもいい。自分が思ったことを書いてみる。そうすれば、誰かから返信が来るそうだ。  誰がどんな願いを込めてポストに投函するのか、そしてどんな願いが叶うのか。想像した世界が手紙を通して広がっていく。
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