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「図書委員?」
「そう、今日の5時間目に委員会決めがあるらしいの。そこで私と一緒に図書委員になってくれないかなって」
僕はその言葉を聞いて不思議に思った。
何かをはじめる、というのは、それだけで大きなエネルギーを使う。
それは省エネ派の僕たちにとって、避けて通るべき道じゃないのか。
「委員会なんて全員参加じゃないだろ。わざわざやらなくてもいいんじゃないか?」
「私もそう思っていたんだけど、去年一年間の高校生活を通して、ここで委員会に入っておくと大きなメリットがあることに気付いたのよ」
「メリット?」
水守はすらりとした白い指を立てる。
「ええ。まず教師の心証がいいのが一つよね。それと委員会は全員参加ではないけど、高校のシステムとして後々全員に何かしらの役が回ってくるようになってるの」
「ああ、なるほど。文化祭とか体育祭の実行委員とかな」
「そう。そういう季節ものは期間限定だけど、業務量が多くて大変なのよ」
確かに僕も去年は文化祭実行委員会の書記をやったが、その数か月はとても忙しかった記憶がある。
「なるほど。ここで委員会に入っておけば、それを理由に断りやすくなると」
「そういうこと。そして図書委員会は二年生だけの委員会なの。そんなに人数も要らないんでしょうね。先輩も後輩もいないから気を遣う必要もない。さらに司書室という静かな場所も手に入る」
「でも貸出業務とか大変なんじゃないか」
「それがね、私は去年図書室によくいたんだけど貸出をしている人はほとんどいなかったの。多分今は電子書籍とかあるから、そっちに流れてるんでしょうね」
「僕は紙の本のほうが好きだけど」
「私もよ」
僕と彼女は互いの目を見合わせて小さく笑う。
図書委員になるメリットは理解した。「でも」と僕は最後に残った疑問を彼女に投げる。
「でも、どうして僕なんだ?」
「変にやる気のある人と入ったら『ここを俺たちの力で最高の図書室にしようぜ!』って謎の企画に巻き込まれそうで嫌じゃない」
「ああ、そりゃそうだ」
僕は苦笑した。協力関係ってのはそういうことか。
まあ何にせよ、波風の立たない高校生活を維持できるなら僕にとっては願ってもない話だ。
「よし、手を組もう」
「決まりね」
こうして僕と彼女の無気力同盟は締結され、二人で図書委員をはじめたのだった。
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