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「……聞いてないぞ」
「私もよ」
放課後。
小声で言い合う僕たちは図書室の貸し出しカウンターの奥にある司書室に呼ばれていた。
そこにいるのは司書の先生と僕たちだけだった。
「最近図書室を利用する生徒が急に減ってね、今年から図書委員も一クラスに減らそうって職員会議で決まったの。そしたらあなたたちのクラスの担任が手を挙げてくれてね」
司書の先生はゆっくりとした口調で話す。
つまり、今年の図書委員は僕たちだけだということだ。それは僕たちに図書室の全ての業務が回ってくるということである。「担任め……」と隣の水守が小さく呟いた。
「さて、あなたたちにやってもらいたいことはさっき説明した貸出業務と整理整頓が主なんだけど、もう一つだけやってもらいたいことがあって」
「え、なんですか?」
「ちょっと二人ともこっちに来てもらえる?」
先生についていくと、僕たちは入り口に一番近い本棚の前に着いた。
僕よりも背の高い本棚にはまだ何の本も並べられていない。
「あなたたちは読書が好き?」
「ええ、まあ」
「そうですね」
僕たちの返事に嬉しそうに頷いた先生は空の本棚を手で示す。
「この本棚をね『図書委員おすすめコーナー』にしようと思ってるの」
とても嫌な予感がした。
「だからあなたたちのおすすめの本を選んで置いてほしいの。あ、図書室にない本は取り寄せてもいいからね」
先生の言葉に、僕は顔を歪ませないよう気を付けながら「……はい」と小さく返事をする。
きっと彼女も悟っているだろう。
僕たちの描いた平和な図書委員生活が早くも終わりを告げたことを。
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