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長野の田舎から大学進学の為に上京して、都会の生活の便利さに慣れてしまい、そのまま就活、東京に住み始め、既に六年の月日が流れていた。
就活に苦戦した私は父の幼なじみの伝手で内定を貰い、入社した。
社名は「帝商フーズ」
大手総合商社『帝和商事』の傘下に属する生活関連商品や食品分野を分離独立させた系列会社。
私はエリート集団の集まる経営企画部に属し、アシスタント業務に就いていた。
私の名前は長瀬万葉(ナガセマヨ)二十四歳。
室長の神戸浩明(カンベヒロアキ)さんに頼まれた資料のデータ入力を行っていた。
「近々…社長は退任するらしいぞ」
目の前のデスクから漏れて来た衝撃的な話。
私はキーを叩きながらもそば耳を立てた。
「腎臓の具合が良くないからな…」
「次期社長はアメリカに居る息子らしいぞ」
「アメリカのロースクールを首席で出て、ニューヨーク州の弁護士をしているエリートらしい」
「へぇー…」
「お前ら…おしゃべりに花を咲かせているが…仕事はキチンとやってるのか?」
フロアに戻って来た神戸室長の雷が静かに落ちた。
「すいません!!室長」
「全く…」
神戸室長はトレードマークの銀のメタルフレーム眼鏡のブリッジを上げ、呆れたように溜息を吐く。
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