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「俺が社長就任して、入院している父が会長に就くが、会長室の移動は嫌だと言って…俺が会長室を社長室として使用するコトになった」
会長が亡くなられたのは私が入社する前の年。
今の社長が会長職も兼任していた。
「会議が始まる前に少しは掃除したんだけど…」
「そうですか…」
「君には一時間ぐらい書類をシュレッターして欲しい」
「一時間でいいんですか?」
「あぁ…君だって…「経営企画部」の人間だ。忙しいだろ?」
「まぁー」
私は書類をシュレッターにかけている間、社長はひたすら本棚に立てかけている本を漁り、必要な本と不必要な本とで分けていた。
「適当に全部シュレッターしないでくれ…会社に必要な書類や資料は残しておいてほしいんだ」
「分かりました…」
「まぁ、俺が適当に必要な書類は割愛したけどな…」
「なら、このまま全部…シュレッターします…」
「いい性格してるな…」
社長はクスッと笑い、ビジネスバックを漁った。
「あれ…此処にいれたはずの…パスポートがない…」
「パスポート?あ・・・もしかしたら…私の部屋かもしれません」
「えっ?」
「貴方の素性が知りたくて…勝手にバックを開けました…すいません」
「・・・出したら、戻しておけよ…今夜も君の部屋に行くしかないな…」
「…私が責任をもって、明日持ってきます」
二日連続はカラダが持たない。あ…私は何を期待しているんだろう。自分で自分が恥ずかしくなった。
「冗談だ…今夜は会食だし…明日、ちゃんと持って来てくれよ…万葉」
「・・・名前を呼ばないで下さい…心臓に悪いです」
「俺達は互いのカラダを知り尽くした仲だろ?万葉」
「・・・やっぱり…憶えているんですね…誰かに訊かれたら、誤解されますよ…」
「何だ?社内に交際してる男が居るのか?確か…Hは四年振りと訊いたが…」
「・・・居ませんよ…憧れの人はいますけど…」
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