プロローグ*酸いも甘いも

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マスターは困惑しながらもシェイカーを振って、私のカクテルを作ってくれた。 三角グラスに入ったレモンドロップ。 甘酸っぱいレモン味のウォッカベースのカクテル。 「どうぞ…」 私の前に差し出されたカクテルを男が横から奪い、一気に飲み干した。 「酸っぱい…」 「それは私の…」 「マスター幾らだ?」 男は無視して、スツールから腰を上げてコートの隠しポケットからブランド物長財布を取り出した。 「一万二千円です…」 「釣りは要らない…とっておけ」 男は二万円カウンターにおいて、千鳥足で出て行った。
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