プロローグ*酸いも甘いも

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「迷惑な客ですね…」 「まぁ、来てほしくない客だね・・・」 マスターは柔らかく笑みを浮かべながらシェイカーを振り、もう一度レモンドロップを作ってくれた。 「・・・ありがとう…」 私はレモンドロップを口にして、仕事の疲れを癒す。 ボンゴレパスタを食べ、バーを出た。 「明日も頑張るぞ!!」 マンションの前のゴミ置き場に差し掛かるとさっき見たグレーのスーツ姿の男が倒れ込んで来た。 「ちょっと!?こんなところで寝てたら、風邪引きますよ」 私は彼のカラダを強く揺すって起こした。 「!?」 彼は目を覚まし、私をジッと見つめる。 切れ長の黒い瞳は焦点が定まっていない。 良く見れば、かなりのイケメンで整った顔。 私が顔に見惚れていると顔を近づけ、唇を奪って来た。 「何するんですか!!?」 思わず彼を思いっきり突き飛ばした。 「痛っ!?」 再び、ゴミ置き場にあった段ボールに倒れ込む男性。 「!?」 急に雨が降り始めた。 ポツポツと雨粒がアスファルトに斑の模様を作っていく。 ――――このままだと彼が濡れてしまう。 「ほら、立って!!雨が降って来ましたよ…」 私は自分よりも大きな体躯の彼を立ち上がらせ、マンションのエントランスへと誘導した。
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