涙の理由

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 伝家の宝刀〝泣き落とし〟。  今日も、仕事の失敗は涙で許して貰う。 「仕方ないな……」  ほら。上司も先輩もチョロいもの。  嘘がバレそうな時だって、涙を見せたらどうにかなる。  涙は武器以外の何物でも無い。 「相変わらず最低だわ、アイツ」 「腹立つわー」  聞こえる悪口なんて気にならない。涙を有効活用出来ないような人には勝手に言わせておけばいい。  だってそうでしょ?  感動したから?  悲しかった?  嬉しかった?  綺麗事でしょう、そんなの。湧き出る感情で自然と泣くなんてあり得ない。  泣くのは処世術。それ以外の理由なんて無いと信じてた。 「すみません~」 「仕方ないなぁ」  新人が、泣いている。 「先輩がしっかりしてくれないとね。これは先輩がいけない」  新人のミスが私の責任となった。 「いえ、とんでもないです! 私が全部いけなかったんです!」 「いいのよ、そんな責任感じなくて。次頑張ればいいの」  現れた強敵は、私と違い、女も懐柔していく。  悔しくて唇を噛み締めていた。  負けたの? 私は、負けたの? 「先輩、ごめんなさーい。あれ、どうしたの、先輩、泣いてるの?」  新人に言われて気付いた。頬に涙が伝っていた。  意図せずして込み上げ溢れた涙の意味は。  悔しくて。悔しくて。
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