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同居
家に着き、アレッサは驚いた。
「リッキー1人で住んでるのにこんなに大きな家を持っているのね」
「まぁ仕事で稼いでるからな」
「何の仕事してるの?」
「製薬会社の経営」
「え、社長なの!?口が悪いからその辺の工場勤めかと思ったわ」
「まぁいい、入るぞ」
玄関を開け中に入る。アレッサはとにかく汚れていたので、浴室に案内しシャワーを浴びるように促した。
「まって、荷物も着替えも何も無いんだけど…」
「今日はとりあえず俺の服を貸す。明日、必要なものを揃えてやる」
「ありがとう。アナタって口は悪いけど、根は良い人よね」
「うるせぇ。いいからさっさと入ってこい」
俺は脱衣所を出た。出てくるまでリビングでテレビでも見ながら時間を潰そう。そう思い、俺はソファーに腰を掛けた。だが、また俺の心は戸惑いを見せていた。
‘‘俺が女と同居?親と暮らした記憶もまともに残ってないのに、一体どう過ごせば…‘‘
と考えているうちに、俺は意識を失いそのまま眠りについた。
目を覚ますと、キッチンでアレッサが夕食を用意しているのが見えた。
「あら、起きたのね!シャワーから上がった時、声をかけようかと思ったんだけど起こすのも申し訳なくてさ」
そう言いながらこちらに近寄ってきたアレッサは、出会った時とはまるで別人のように美しく綺麗だった。サラサラな髪に、白く美しい肌。思わず見惚れていると見透かしたようにアレッサが言った。
「どうしたの?アタシに見惚れてるの?」
「う、うるせぇ!そんな事ある訳ないだろ」
「へぇ~素直になれば良いのに」
正直、女性を前にしてどう接していいのか解らない。俺は緊張している。サツに追われているとき以上に。
「そんな事より、感謝の気持ちを込めて食事を用意したわ!勝手に冷蔵庫の中の物使っちゃったけど…ごめんなさい」
「謝ることは無い。この家にいる間はお前の役割だからな。必要なものは俺が金を渡すから好きに買ってこい」
そう言い俺はテーブルに向かった。そこには、ありふれた様な料理が並んでいたが、どれも旨そうに見えた。
「全部作ったのか?」
「もちろんよ」
椅子に座り、食事を始める。誰かと食べる食事はオスカーに世話になっていた時以来だった。アレッサが向かいの椅子に座り食事を始める。
「このお肉と野菜の炒め物、母の得意料理でね?アタシの自慢の一品なんだ!」
という。俺はその料理を手に取り食べた。
「うまい…」
「でしょ!得意料理の1つなんだから!」
俺は不意にも自然とその一言を発していた。言いたくて言った訳ではなく本当に勝手に口が動いた感覚だ。アレッサが自慢げに何かを語っているが、頭に入らない。俺はその食事を無言でただひたすらに頬張った。アレッサは呆れたような嬉しいようなモドカシイ表情をしていた。
こうして、俺とアレッサの同居生活が始まったのだった。
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