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十歳のとき、私は家族で出かけた館山の海に入って溺れたことがある。その時私は、朦朧とする意識の中で見たのだ。群青色の尾をした―人魚を。
「・・そんな、まさか」
私は疑うような目で壮馬を見る。浜辺で発見された私は、駆け付けた救急隊のひとと両親に囲まれながら、人魚を見たのだと。彼に助けられたのだと。先ほどまでここで一緒に話をしていたのだと言った。しかし、それを信じてくれる大人はいなかった。そんな大人たちの言葉を浴び続けた私は次第に、自分の見たものが信じられなくなっていった。それは夢だったのだと、いつしか思うようになっていた。
壮馬は微笑んでいる。私の手の中にあった最後の線香花火。静かに、砂浜に溶け込むように、ポタリと落ちた。
「・・やっと見つけた」
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