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「いつの話してるんだよ。そっちの世界と同じように、こっちの世界だって色々と変わってきてる」
そう言いながら、壮馬は私の髪を梳いた。その感触が心地よくて、静かに目を閉じる。
知樹に振られ、約束をドタキャンされた。自分の好きでもない、知樹を思って選んだ色のワンピースに身を包まれていることが、不快でならなかった。挙句、ナンパ男に絡まれて。どうしてこんなに悪いことばかりが続くのだろうって、自分自身に嫌気がさしていた。なのに。突然現れた壮馬は、そんな私を一新させたのだ。あの時と、同じように。
「二度も、助けてくれて、ありがとう」
か細く呟くように言った言葉は、波の音にかき消された。それでも壮馬には聞こえていたらしい。可笑しそうに笑い声をあげながら言った。
「郁美が絡まれてるとき、正直怖かったよ。捕食しようとする鮫みたいだった。俺が助けに入る必要なんてなかったかもね」
私は顔を赤くする。ちょっと!失礼でしょ、と壮馬を小突いた。
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