線香花火

　「ねえお姉さん。1人なの？」

　私は今、とても不機嫌MAXである。
　江ノ島水族館に向かう予定で降りた、江ノ島駅。久しぶりのデートだからと新調したワンピース。私は落ち着いた色が好きだけど、あいつが郁美はピンクが似合うっていうから、わざわざそれを着てきたというのに。
　握るスマホを潰してしまうのではないか、というくらい強く握りしめた。その指の隙間から見えるあいつ―知樹からのメール。

―別れよう。

　だったらもっと早く振れよ！内心毒づく。そうしたらこんな好きでもないピンクのワンピースなんて買わなかったのに。付き合って一年目の記念日は知樹が仕事があるっていうから、前祝だね、なんて話してた昨日の夜はなんだったんだよ。私の腸は煮え返りそうな苛立ちでいっぱいだった。