カラーコンタクト

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「エマはね、ミヤの仲良しなの。こういうの初めてだから、原田さんなら安心かなって思って」  普段よりも高めのミヤの声。私は、パクパクと自然に動く口を手で押さえる。驚いて声も出ないとはこのことだ。  話し方だって普段のクールなミヤとは違うし、一人称をミヤと呼ぶ。 「萌が思ってる子とは違うと思う」  そう言ったミヤの言葉が脳裏に響く。よくわからない内に車はどんどん加速し、原田さんとミヤは何気ない話題で盛り上がる。  私はミヤに促されるまま時々相槌を打って、大きく頷いてみせる。  その内にどうやら私はエマちゃんで、ミヤと同じ大学に通う20歳のお友達らしいということまでは理解できた。  連れてこられたお店は、少し高そうなイタリアンレストランで、よくわからないメニューを見ながら、食べたことのあるカルボナーラを注文した。  お酒を勧められたが、当然未成年の私は断る。つまらなそうな顔をした原田さんにミヤは「エマは初対面の男性の前ではお酒は飲まない子なの。純粋で彼氏もいたことないのよ」と言った。  上手にパスタをフォークに巻き付けられずに苦戦している私は、その言葉を聞いてピタリと動きを止める。 「ああ、そうなんだ。エマちゃんは偉いね。純粋なんだ、可愛いね」  そう言って原田さんがこちらを見ながらニヤニヤと笑うものだから、ぞぞっと背筋に冷たいものが走った。  原田さんはその後もミヤと私を交互に見ながら時々ニヤニヤ笑っては、ぺちゃぺちゃと音を立てながらピザを頬張っていた。  隣では軽やかにくるくるとフォークを回してパスタを巻き付けるミヤ。パスタ慣れしているミヤを横目に、こんなことならドリアを注文すればよかったと後悔する。  何とか食事を終えて、また車に乗り込む私達。 「ミヤちゃん、今日ももう終わりなの?」  車を走らせながら、ルームミラー越しにミヤを見る原田さん。目線がミヤに向いていることは、ルームミラーを見ればわかる。  その舐め回すような視線が私はどうも苦手だ。 「この前も言ったでしょ? 課題が多くて大変なの。それでもミヤ、少しでも会えたらなって思って時間作ってるんだよ?」  ミヤが明らかに不機嫌そうな顔をする。すると原田さんは慌てたように「ご、ごめん、ごめん。わかってるよ。会ってくれるだけ嬉しいよ。お友達も連れてきてくれるなんて、信用してくれてる証拠だもんね」と言った。 「エマちゃんも来てくれてありがとうね。ミヤちゃんの大事な友達に会えて嬉しかったよ」  まるでご機嫌取りをするかのように私にも優しい声色で言う彼。 「い、いえ……こちらこそご馳走様でした。とても素敵なお店でした」  一応礼儀としてそう言えば、原田さんはまた気持ち悪い笑顔でニヤニヤと笑った。  車に乗った公園が近付き、停車した。原田さんは、こちらを振り返り「本当にありがとうね。またご飯行こうね」と言った。
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