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「うわー!」
俺はその場にひっくり返ってしまった。腰が抜けたようでうまく身動きが取れなくなっていたが、目はしっかりとその頭部をとらえていた。
「人殺し・・・」
その頭部は俺に向かってそう言ってきた。
心臓が跳ね上がった。
「あ・・・え・・・」
うまく言葉にできない。
しかし、今、確かに人殺しと聞こえた。
なんだよ人殺しって。
「人殺しー!」
今度ははっきりと、大きな声で頭部はそう叫んだ。
「うわー!」
俺は全力で頭部から離れようとしたが、体がうまく動かない。死にかけのゴキブリのように、手足をバタバタさせるのがやっとだった。
「あなたも私のことつけて殺す気だったんでしょ!」
頭部がそう叫んだ。
必死で後ずさり、俺はやっとの思いで体を反転させることができた。
(ドン・・・)
這ったまま前に進もうとすると、何かにぶつかった。
顔を上げてみると、目の前に女がいた。
多分、俺が尾行していた女だと思う。
着ている服が一緒だったのだ。
しかし、服はビリビリに切り裂かれ、肌が露わになり、血にまみれていた。
そして俺が尾行していた女かどうか確証が持てなかったのは、顔を確認できなかったからだ。
つまり、首から上がなかったのだ。俺は気を失ってその場に倒れこんだ。気を失う前に、先ほどの頭部が尾行している女の顔だったことを思い出していた。
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