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「大丈夫?大丈夫ですか?」
気づけばそう声をかけられ、体をゆすられていた。
「うわー!」
俺は気を取り戻すなり、悲鳴をあげてしまった。しかし、目の前にいるのは親切そうなおじさんだった。
「あなたが倒れていたので心配になったんです」
どうやら、親切な通行人が俺を起こしてくれたらしい。
「そうだったんですか。それはすみませんでした」
「なぜ、こんなところで倒れられていたんですか」
「いや、信じてもらえないかもしれないのですが・・・」
俺は尾行していたことは伏せて、恐ろしい女のことだけを伝えた。
「とても信じられませんよね。こんな話」
「いや、そうでもないですよ」
おじさんは考え込むような仕草を見せた。
「実は先月、この街に住む美しい女性が無残に殺害されましてね。強姦されたあと、首から上を切り取られましてね。犯人はまだ捕まっていないのですが、その女性の頭部もまだ発見されてないんですよ」
「そんな事件があったんですか」
「ええ。そしてその事件以来、殺害された女性の霊がこの公園付近に出るような噂はあるんです」
「では、その事件の現場はこの公園だったのですね」
「いや、そうではないんです。ここは殺害現場ではない。しかし、女性の首はその木の下に埋まってるんですよ」
「え?どういう・・・」
そこで言葉が切れた、おじさんの手にナイフが握られていたからだ。
「私がね、その犯人なんですよ。綺麗な子だったんでね。首を持ち帰ったんですよ。でもね、3日もすれば飽きてしまって。美人も3日で飽きるっていうけど、あれ本当ですね。飽きていらなくなったから、その木の下に埋めたんです」
おじさんの言っていることがよく理解できなかったが、嘘ではないことは伝わってきた。
「でも、この公園に幽霊が出るって噂広まってるんですよね。だったら、オカルト好きな人とかが調べるんじゃないでしょうか」
何を冷静に言ってるんだと自分で自分に驚いた。
「ああ、あの噂ね。実は僕しか知らないんですよ。あの幽霊を見た人はね、あなたのように気を失ってこの場に倒れてるんですよ。それを僕が起こしてあげるんです」
血の気が引いていく。
「そしてね、僕が殺してあげるんですよ。だから、この噂は僕で止まっているんです」
おじさんはそう言うと、にっこり笑ってナイフを振り上げた。
そしてそのナイフは、俺に向かってまっすぐに落ちてきた・・・
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