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土の賢者
「なんだい?押し黙っちまって。そんなにショックな話だったか?」
といきなりユピテル……いや、ペトラがこちらを振り向いた。
うわあ!と声をあげそうになるのを必死に抑えながらクレオンは言った。
「あ……ああ。僕はミアセラの弟子みたいなもんだったからね。そりゃあショックさ。久しぶりに会いに来たら家はなくなってるし、国は変わってるし、それに師匠は監獄に囚われてるって言うじゃないか。この目で見るまでまだ信じられないけど……。ところでユピテル。師匠はどこにいるんだ?行方を教えてくれ。」
「俺は知らねぇよ。捕まったって聞いただけさ。」
どうやら中心都市についたらしく喧騒が大きくなってきた。
「さあて、着いたぜ。ここが"俺の国"土の国ティエラ・ブルーノだ。歓迎するぜ。反逆者共。とりあえず入れよ。話はそれからだ。はは…馬鹿なやつ。俺が賢者だとも知らずにのこのことついてきやがって。どうやってこの国に来たのかは知らねえがまぁ……それもすぐに聞き出してやるさ。」
土人形の兵士達が一斉に3人を取り囲み縄で縛りあげていく。
「ほう……お前にそんなことできるのか?」
とこんな状況にもかかわらず紅月は不敵に笑った。
『あんまり逆撫でするなよ……』とクレオンはハラハラしながらその様子を見守る。『隙がなくなるだろ……!それともホントにさっき言ったみたいに戦おうってのか?やめとけよ……。そしたら7賢全員と戦うことになるかもしれない……ここは穏便に……。』
「なんだと?お前これから殺されるってのに随分と余裕じゃねえか。あん?何か策でもあるってのか?そんなもんがありゃあ俺がとっくに見破ってるぜ。」
「相変わらず馬鹿だなお前。」
とリアンジュがペトラを嘲笑しながら言った。
「オレがいる時点でこいつらにお前のことが知られてるって考えなかったのか?俺らが何の策もなしに本当にここまでお前に付いてきたって思っているのか?冗談!なぁ……お前本当にそのミアセラの行方は知らないのか?」
「知ってたとしても教えるわけがないだろうが!」
「確かに……その通りだ。」
と紅月は呟いた。
するといきなり音を立てて土人形が炎に包まれる。一体、また一体、次々に発火し砂になっていくそれを見てペトラは唖然となる。
「ど……ういう……」
繋がれた縄を自らの炎で焼き切ると紅月はペトラに大剣の刃をつきつけた。
「ならば力づくででも聞かせてもらおうか!」
周囲が一瞬で炎に包まれ、ペトラの逃げ道を塞ぐ。
「な……お前!まさか禍月……。火の国が捕らえたバケモノかぁ?」
とペトラが炎の渦の中から大声をあげる。
「だったらどうする。さあ。逃げ道は塞いだ。このまま黒焦げになりたくなかったらさっさとミアセラの居場所を教えろ。」
「まだだまだだ!まだ負けちゃいねえ!お前らなんかに言うものか!」
激しい地響きが起こる。ペトラはどこから取り出したか大きな槌で地面を叩き割ったのだ。
「その余裕な顔!反吐が出るぜ!地獄の底で泣きわめくがいい!」
そう土の賢者は大声で叫び跳躍すると紅月の元へ大槌を振り降ろした。
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