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ペトラ・ブロンザイト
風の国ミストラル・ゼファー。今いる土の国の隣に位置する獣人の住む国だ。
だが、隣にある国といっても風の国の気候は土の国と違い暖かく湿った風が流れる影響か暑い日は少なく年中過ごしやすい。
国土の大半は森に覆われていて国名の由来でもあるミストラル木材という香木が特産品として有名である。
クレオンはあの妙に甘ったるく頭が痛くなるような香りをどうも好きにはなれなかった。しかし、各国での人気は高く様々な商品となって棚に並ぶポピュラーな香料である。
街の修復もあらかた済み、ペトラは『やれやれ』と頭を掻きながら3人に言った。
「ったくお前ら……まさか賢者と本気でやり合うとはなかなかずぶとい神経してんじゃねぇか。他の国なら間違いなく死罪だぞ?まぁ…俺…賢者って言っても仮だし、他人を死罪にするなんざ権限ほんとはどこにもねぇんだけどよ。」
いきなりの衝撃的な告白に3人は呆気に取られて彼を見た。
「君は何を言っているんだ?」
とクレオンが尋ねると、どうやら彼は支配者もなく荒れ果てたこの『失われた土地』に勝手にやってきた放浪の盗賊の首領だったらしい。
彼は元々戦うことが好きで様々な土地で戦いをふっかけては略奪の限りを尽くしてきた札付きの悪だった。
そんな彼がなぜか虹水晶から砂の賢者の代わりにこの土地を支配する権限を……"土の魔法"を与えられた。それ以来彼はこの土地を支配し、土の賢者を名乗っている。
「俺がこの土地に来たのが3年くらい前だ。砂の賢者は俺が来る何年か前にはもう捕まってたらしい。俺は『賢者(仮)』だからさっきも言ったけどそれ以外は詳しく知らねぇ。……だが、お前の実験には参加しろって言われたんだよな。正直気は進まなかったけど戦えんなら願ったり叶ったりだ。おかげでいい運動にはなったぜ……へへ。」
とペトラはリアンジュを見てニヤニヤと笑った。
「……クソが。」
とリアンジュは呟いたがそれ以上は何も言わずに彼女は横を向く。
「まぁ、そういうわけだ。俺は賢者もどきだから今後もお前らには手は出せねぇし、この国に引き止めるようなこともできねぇ。お前らを捕まえた時はああ言ったが闇の国の連中を道連れにしてまで国から脱出したやつと旅をしてる連中の面を拝んどきたかった。そして、お前らの力を試してみたくなったのさ。いやぁ……おかげで最高の時間を楽しめた!熱い戦いありがとな!」
「なるほど。お前にとって私達はただの挑戦相手だったというわけか……。だからわざとあんな簡単な兵力で私達を捕らえたのだな。それに国民を巻き添えにしてまで戦う必要があるのかと疑問だったが……お前の頭には初めから戦うことしかなかったのなら納得だ。……それでよく賢者が務まるものだ。虹水晶の選択基準は甚だ疑問だな。」
と紅月の言葉に怒りが滲む。
「でもな。紅月。お前が先にペトラを挑発したんじゃないか。それで彼は本気になってしまった。君にも少しは責任があるぞ。」
とクレオンが静かに紅月を窘めた。
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