紅の夢

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紅の夢

そんな彼女が最近妙に遠出をすることが多くなった。 なんでも『夢で人が襲われるのを見る。それも必ず最後には死んでしまう夢だ。その人は必ず自分が見た事のある景色の中で死んでいく……もしかすると現実に起こるのかもしれない。』ということらしい。 紅月は予知夢などという迷信に惑わされるような人では無いはずだ。 初めはクレオンも『何を馬鹿な……』と呆れたが、それが何ヶ月も続けばさすがに考えを改めざるを得なくなった。 紅月は以前のように暴走するようなことはなくなってきたし、彼はあまり家から出ることを好まない。初めのうちは『好きにしろ』と無視してきた彼もいくらなんでも心配になる。 いつかの時のように紅月が未だ暴走するバケモノだと思っているエンチャンターやストッフに襲われ大怪我をして帰ってくることだってありうる。 ……しかし本音は『好きな人が離れたところで怪我でもしたら…』という気持ちがあったというだけだったのだが…… 『僕の力は役に立たないかもしれないがお前はこれでも僕の所有物だ。これからは僕もついていく』 そういうクレオンに紅月は 『私のことが心配なのか?いいやつだな。クレオンは。』 と笑うのだった。 彼が素直じゃないやつなことは紅月も知っている。この他人嫌いで引きこもりで変わり者の研究者が自分のことだけは誰よりも特別に思ってくれているらしいのが紅月には嬉しかった。 しかし、紅月は恋愛には疎く彼の気持ちにはなかなか気づかなかった。 『それでも傍にいれるだけで充分さ』 と『素直じゃないヤツ』は思っていたわけなのだが。
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