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私は大学進学を切っ掛けに北海道から東京に上京したお上りさんだ。叶えたい夢があった、入りたい大学があった、就職したい会社があったなんていう理由は無く単純に東京という大都会に憧れを抱いていたからである。
私が生まれたのは北海道上川郡の美瑛町。
観光地はあるが私の家の周りはそれはもう広大な緑しかなくテレビやドラマに映し出される綺羅びやかな東京のビル郡は高校生の私にとって毒々しいほど刺激的で否応なしに憧れを抱かせた。
「お母さん! 私、東京の大学に行きたい」
農家を経営する両親は私が家業を継ぐものだと思っていたらしく猛反対をした。
「東京でOLがしたい」
「おーえる!? そんなの旭川でもできるべ!」
「東京でする事に意味があるんだべ!」
そんな喧嘩を1ヶ月ほど続けていたら弟の
棗が「俺が農家を継ぐから姉ちゃんは東京に行きなよ」と言ってくれたのだ。それでも両親は反対していたが祖母と祖父を味方につけて軍配は私に上がった。
4年も学費は払えないと言われてしまい奨学金で短大に入学した私はアルバイトをしながら憧れていた事を満足するまでやりまくった。おかげで単位がギリギリになり余計な苦労をしてしまったが何とか内定をゲットし卒業して今に至る──
会社での仕事は雑用。
雑用を任される日々はとても楽だ。
みんな私が何も出来ないと思っているからこぞって雑用を任せる。お茶汲みやコピーや買い出しなど誰でも出来ることだけど誰もやらない仕事を日々こなしている。遣り甲斐は皆無。でもそれで給料が貰えるなら遣り甲斐なんてなくても良いやと私は思っていた。
そんなOL生活をしながらアフターファイブは合コンに通いまくり出会ったのが春彦だった。私よりも11才年上。今思えば出会った時点で結婚をしているのか確認しておくべきだったかもしれない。
スーツの腕からチラチラと見え隠れする腕時計は誰もが知っている有名ブランドで会計時に出した黒い長財布もブランド物──そんな上辺だけで私は春彦に強く惹かれてしまった。
春彦という男に惚れたのではなくブランド物に身を包む都会育ちの春彦というブランドに惚れていただけなのかもしれない。
そして春彦はブランド物をちょっと見せただけで引っ掛かるような頭の悪い私に狙いを定めただけなのだろう。都合がいい女とはまさに私の為にあるような言葉だ。
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