wish.2

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「な、んですか?」 ドキドキしてるのは、急に名前を呼ばれたから。 だって、別になんとも思ってないもの。 あれ?あたしはなんて呼べばいい? 「どうした?」 「あ、イエ、なんでもありません」 会場内にいるせいか、普段はぜったい見ない心配したような表情。 だけど目は、ちゃんとしろと言っている。 そういえば、どんな嫁を演じればいいか聞いてない。 まぁ、いっか。 「具合悪くなったら言えよ」 「大丈夫」 そして、さすがに敬語はダメだと思う。 イヤ、いろんな夫婦の形があるとは思うけど。 なんか、このヒトに敬語はイヤだ。 「それよりも、こちらのキレイな方は?」 気づけば目の前に、眼光鋭いキレイなオネエサマがいて。 そっちにも驚いたわ。 めっちゃ睨まれてるんだもん。 「あー…誰だっけ」 このオネエサマの態度からして、ぜったい面識あるんだと思うけど。 主任は全く思い出そうともしてない。 それどころか、腰に腕を回してきて引き寄せられる。 …あとで文句言ってやる! 驚いて声を出さなかったことを褒めてもらわなきゃ。 「申し訳ありません、今日は妻と来ておりますので」 ニコニコとした笑顔が、あたしには恐怖を感じた。 セリフは穏やかで一見優しく笑っているように見えるけれど。 その目の奥は笑ってなんかいない。 この笑顔の時は逆らっちゃいけないんだ。 教育係だった頃のいらぬ知恵。 「え?妻?」 オネエサマ、引きつった口元がキレイなお顔を台無しにしてますよ。
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