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きっと、どこかのお偉い様のお嬢様かなんかだろう。
「主人がいつもお世話になっております」
ニセモノの嫁がこんなことを言ってもいいのかしら。
チラッと主任を見るけれど、なぜか顔を背けてて。
うん?
そっちの方に誰か知り合いでもいるのかな?
あたしの視線に気づいて、コホンっと小さく咳払い。
「申し訳ありません、まだ挨拶に回らなければいけませんので、これで」
えー、あたし挨拶回りとかより食べたいんだけど。
こんなホテル、こういうことがない限り来れないんだから、食事を満喫したい。
そもそも、このパーティーってなんのパーティー?
「つかぬことを伺いますが」
「急に改まってどうした?」
「なんのパーティー?」
ソレを聞けば、マジか…という顔。
「…うん、昔からどっか一本緩んでいるとは思っていたが…ここまでとは…」
「バカにしてる?」
「はぁ…入口で看板見なかったのか?」
「メガネ外せって言ったの誰だったと?」
近くはなんとか見えるけど、少し離れた場所の文字なんか見えりゃしない。
こんなことになるなんて思わないから、コンタクト持ってきてないって。
「創立パーティーだ」
「どこの」
「ウチの会社」
……あ!
そういえば創立記念日そろそろだった。
でもパーティーなんか、一平社員が来てもいい場所じゃない。
だから、創立記念日だからといってパーティーがあろうがなかろうが、全く眼中になくて。
「気にすんな、誰もお前が社員だって知らない。他人を装え、嫁のフリを完璧にしろ」
イヤイヤ、なんで急に仕事モード?
めちゃくちゃやりにくくなったよ。
完璧な嫁って何さ。
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