wish.2

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「着いたぞ」 「ありがとうございます」 …あれ? あたし、住所言ってなかったハズなのに。 実家暮らしなんて、そんなことまで話した覚えもなくて。 「…なぜ、家を?」 「やっぱりお前、何も覚えてないんだな」 「え?」 なんの話? 「ホラ、早く家帰んな」 「え…イヤ、あの、主任?」 何がなんだかわからなくなってきた。 あたしは、主任に会ったことがあるの? 「どうしても知りたいなら、に聞きな」 混乱する中に、さらに混乱するようなことを言ってくる。 「じゃ、お疲れ」 「あ、ハイ、お疲れ様でした…」 そんな混乱しているあたしを家の前に残して帰っていく主任。 ひまって、なんでお兄ちゃんのことを? 主任はじゃあ、ずっとあたしのことを知ってた? もう見えなくなった車のテールランプが残像のように焼きついてる。 それが、なんだか主任がまだいるような感覚に似ているような気がして。 「誰…?」 考えてもわからない。 兄に聞けば、すぐにわかるんだろうけど。 長期出張で今はここにいない兄に聞けるわけもなく。 あ、電話で… …きっと、たぶん重要なこと。 そんな簡単に電話で聞ける内容じゃない。 覚えてないってことは、昔にあった出来事でただ忘れてるだけ。 なのに、なんで忘れてるんだろう。 聞いて、思い出せるのかな。 今思えば、お兄ちゃんはあの会社に入ること、めちゃくちゃ反対してたっけ。 それとこれは関係してるのかな…
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