wish.2

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「…イヤ、やっぱムリです!」 「ここまで来て往生際が悪い」 なんだ? この高級ホテル、場違い感が半端ない。 黒のシック?って言うの? ドレスを身に纏う自分が自分じゃないみたい。 「なんなんですか、なんであたしなんですか」 「一宿一飯の礼」 「イヤ、それは別で返しますから」 「あ、指輪」 ……はぁ? 今日一日だけの相手に指輪? 「サイズ調整できるヤツ」 「なんだか、スッゴい嬉しそうですね」 指輪を渡してくる主任の珍しい笑顔に、ついつい見惚れてしまう。 年齢差があまりなければ、恋愛対象になってたかも。 「イヤ〜、これで俺もお偉い役員の娘はいらんか攻撃から解放される」 「あ、そっち」 「ん?なんだと思ってたんだ?」 「だって、いきなり嫁とか言うから」 なんだって言うんだろう? 「ふーん?まぁ、行くぞ。笑顔振りまけよ」 なんだかホントに嬉しそうで、今日だけなら仕方ないと諦めのため息を一つ。 というか、そういうことならちゃんと説明してほしかったな。 この一週間、仕事があまり手につかなくて、主任のせいなのにめっちゃ怒られたし。 イヤ、だからといって、説明されたとしても納得はいかない。 あたしじゃなくても、もっと適したヒトがいるハズ。 「桃?」 ビックリしたのか、ドキッとしたのかわからない。 確かに上の空だったけど、急に名前を呼ばれて肩が跳ねた。 主任、あたしの名前知ってたんですね。
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