冒険者ギルド

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冒険者ギルド

 物音で目が覚めると、トーマスさんが朝食の準備をしてくれていた。 「ありがとうございます。」 「いえいえ、本日はハードスケジュールになりそうですから。」 「……。」  お見通しですか……。トーマスさんはニコリと微笑み、退室した。 「ギルドに行ってみるか。」  ギルドは国の手が回りきらない事を率先して引き受けて冒険者達に仕事を提供する組織だ。国の命令で動いている訳ではない、全くの別組織。金になる仕事が有れば良いが……。  朝の6時に着いてしまった。まだ冒険者は居ない。ギルドカード作成の為に登録しに行く。 「ようこそ!冒険者ギルドへ!」 「冒険者登録をお願いします。」    無事にギルドカードを発行出来たが手数料で150マネーかかった。ランクは上からSランク Aランク   Bランク Cランク Dランク Eランクがある。俺は一番下のEランクからスタートだ。  日本の私服で兵士が支給される剣をぶらさげて、異世界を歩いているのは誰でしょう?残念ながら俺です。ランクの低い依頼だと報酬が少ないし上のランク依頼は受けられない。依頼を受けずにモンスターの素材や換金出来る物を集めて金にしたい……。  金になりそうな物を探しながら歩いているといつの間にか森林地帯に入っていた。森林地帯はさっきまでいた草原地帯と違いモンスターの危険度が増す。発見されると襲ってく来るからだ。ここでキノコや薬草を採取するだけで命がけになる。辺りから雄叫びや悲鳴が聞こえる。森林地帯に入る場合は安全対策をしてから入るのが当たり前だ。最低でも剣は持ってるはず!軽く手助けするだけで金になるかも知れない。  カイゼルは今も尚、大騒ぎしてる所に走り出した。  ニホンオオカミぽい群れに馬車が囲まれていて、二人の護衛らしき人が喰われている。馬車の操者はひたすら騒いでいた。 「手遅れだったか。」 「まだ生きてるからな⁉︎助けてくれ〜!」  おっさんが話しかけて来たせいでオオカミに気付かれてしまった。オオカミは飢えているのか、ヨダレを垂らしながら5〜6頭囲む様に近づいて来る。完全に囲まれる前に近くのオオカミに向かって走り出す!  順番ずつ首に剣を突き刺した。 「失せろー!!」  怒鳴りながら馬車に向かって走り出すと、オオカミは逃げて行った。逃げてくれて良かった〜。俺の勝ち目無いから。  「いや〜助かりました!」 「間に合って良かったです。」 「危ない所を助けて頂きありがとうございます。私は商人のロールです。」 「俺は冒険者です。」 「冒険者ですか。強い訳です。助けて貰った上にお願いをするのは図々しいと思いますが王都まで護衛をして欲しいのです。」  流石、商人だ。謝礼の話しを持ち出さずに護衛依頼をしてくるとは。スマトラ王国の王都、アトラスだと歩いて行ける距離だ。俺の住んでる所だし。近いと大して貰えないし依頼を受けると謝礼の分を少し上乗せされるくらいか……。謝礼の交渉は出来ないから護衛依頼の報酬を交渉するか。金より高価な物を一つ貰いたい。 「アトラスまで……ですか?」 ロールさんは頷いて答えた。 「そうです。」 金になりそうな物を対価に貰おう。 「報酬として、値段に関係無く一つ商品を選ばせてください。」 ロールさんはニコッと頷いた。 「命の恩人ですからねー。先ほどのお礼も含めて、荷台の商品を一つお選びください。」  予想通り謝礼も合わせて来たよ。ハズレか?荷台の中は(おり)になっていて人が数人、入っていた。奴隷商だ。 「どれも一級品です。どれにしますか?私は調達してお店に卸しているので保有してる商品はコレしか有りません。」  女性の奴隷は高値で売られている。高価で手が出せない奴隷も今なら無料!ていうか、この子可愛い……。金に換金とかしたく無い笑 「この一番可愛い子でお願いします。」 「お目が高いですね〜。この中で一番高く売れそうな子ですよ!」  アトラスまで無事に着き、奴隷を受け取り商人のロールと別れた。まったく金策にならなかった。可愛い過ぎて換金したくない。取り敢えず、名前聞かないと。 「俺はカイゼル。名前は?」  緊張してるけど余裕を見せながらカッコつける。 「……ミーナです。」  露店で串焼きを2本買うと店員さんが話しかけて来た。 「アンタの奴隷かい?そんな姿だと可哀想だよ。」 ミーナはボロボロの布を着ていた。 「この後、買いに行きます。」  露店の服屋さんを探しながらミーナに串焼きを差し出す。 「お腹空いたでしょう?串焼き一本どうぞ。」 「ありがとうございます。」  荷台の奴隷達はミーナも含めて痩せていた。何も食べてなかったのかも知れない。可愛い服もご飯も用意する金が無い。馬も用意出来ない。 「おっ!」  流石、露店だ。洋服や靴が安い! 「この子に可愛い服と靴を500マネーで見繕ってください!」 「下着も必須ですよー?合わせて1000マネーでどうですかー?」 「お願いします。」  お金を渡すと若奥様はにっこり微笑む。  「裏の休憩スペースで着替えて行きますか?」 「そうさせてください。」  隣の店でミーナが着替えている間に時間を潰す。素材の剥ぎ取り様のナイフと小麦粉、火打ち石に砥石を購入した。残金、1000マネー。ミーナが裏から出て来る。 「あの、洋服を買って頂きありがとうございます。自分の服は買わないのですか?」 「……まだ、必要無いかな……。」 「……」  目を逸らしたがじっと見つめて来る。ミーナがそれでは…と続けた。 「それでは冒険者ギルドに行きましょう。ギルドに行けば、美味しい話しが舞い込んで来るかも知れません。」  美味しい話は怪しいものだが、思わずニヤリとしてしまう。 「美味しい話しには、裏があるんだぜ?」   ミーナはニコッと笑みを浮かべる。 「みんなが群がるのでダメージは少ないと思います。」 「行ってみるか。」  ギルドの酒場で水を二つ頼もうと席に座ると、一人の冒険者が飛び込んで来た。 「はぐれワイバーンが草原でスイギュウを食ってるぞー!」  そう言って走り出した。はぐれのワイバーンは数人の冒険者がいれば倒せるモンスターだ。酒場に居た殆どの冒険者も走り出した。早い物勝ちだ。
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