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彼等はまだ青春の狭間にいる。
「あっつ、今日も部活あるとか最悪かよ」
「こらー、サッカー部のキャプテンがそんな事言ってて良いのかぁ?」
「うるせぇよ、莉乃っ。良いよなぁ、演劇部は涼しい場所で練習出来て」
今日も幼馴染のタクマは憂鬱な顔で呟く。
記録的猛暑が続いても、日々の部活動は休む事なく続けている。
サッカー部のキャプテンであり、今年こそは全国大会優勝行けるかも!というところまで来ていて一番気合を入れてる彼でもあまりにも熱い日には弱音だって吐いてしまう。
「ほら」
私は彼に彼が一番好きなスポーツドリンクを渡す。
「お、気が利くじゃん」
「暑い暑いってセミ並みにあんたがうるさいからねー!」
「ありがとうな、莉乃っ」
彼は私の頭を優しく撫でると、スポーツバッグを手にする。
「私は涼しい体育館で演劇部頑張るわ」
「うわぁ、嫌味かよ」
「優勝しなさいよっ。しないと許さないからね」
「おー!」
彼が部活に向かうと、撫でられた事を思い出して今になって紅くなる。
告白は……あいつが部活を引退したら。
だって、今は部活で大事な大事な時期だから。
それまでは我慢!
本当は言えるタイミング、たくさんあったのに結局もうこんなにもずるずると引きずって。
受験も始まるけど、いい加減言わないと後悔するのは私だから。
「莉乃、おっそーい!」
「ごめん、ごめん!」
「鬼部長が目くじら立ててた」
「うわ、マジか」
体育館に着くと、鬼と呼ばれる部長・桐谷郁人が私を睨んできた。
「遅いぞ、島谷莉乃」
「すみません」
1分遅れただけじゃん!
「まあ良い。次の演目の主役は島谷で行く」
「は? わ、私!?」
「適任だと俺がそう判断したから、それだけだ」
「サンキュー、ぶっちょ! 私、頑張るよ! ちなみに部長は何役?」
「俺は人魚姫の父親役だ」
「うわ、適役すぎ。口うるさいし、厳しいし」
「は?」
「あ、ストレッチ始めまーす」
「おい、島谷! 今のはどういう意味だっ」
「空耳じゃないですかー?」
演劇部に入ってから初めての主役。
ラストJKにしてようやく獲得した主役!
休憩入ったらすぐにタクマに報告しよ!
けど、私が人魚姫なんて言ったら笑われちゃうかな。
だって、私は女の子らしくないし、髪だってずっとショートボブだし、姫要素ゼロなのに。
だから、多分部長は純粋に私の演技力を認めてくれたんだろう。配役に対するこだわりが強い人だから。
だとしたら、すごくすごく嬉しい。
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