彼等はまだ青春の狭間にいる。

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「部長ー! めちゃくちゃ面白かった、これ! 腹筋崩壊するほど笑ったんだけどっ」 「俺も……観てみたらコメディいけるって思った」 「なんだよ、食わず嫌いだったわけー?」 「じゃあ、今日はこれ」 「ん? またコメディ?」 「同じ監督のだからハマると思うし……」 「ありがとう! めちゃくちゃ楽しみっ」 「良かった。ちょっと元気になったみたいだな」 「へ?」 「本当に思い詰めてたらどうしようかと」 「ちょっと! 大袈裟ー!」 「本当に良かった」 もしかして、私の為にコメディ映画のDVDをこんなに……? 「ちょっとずつだけど、私……頑張って元気になるよ」 「お、おぅ」 失恋した事は18年間の人生で一番辛い出来事だったけど、この件で私にはこんなにも信頼出来る友達がいるんだって気付けた。 やっぱり部長が怖くて嫌味な男子呼ばわりされてるのは……嫌だな。 こんなに良い人なのに誤解されちゃうなんて。 私だけしか知らない。 「莉乃ってさー、演劇部の部長の桐谷くんとやたら仲良いね」 「へ?」 「いっつも仏頂面で話しかけにくいのにさ」 「そうかなぁ? 話しかけると面白いよー?」 「莉乃は誰とでも仲良くなっちゃうもんねー」 「コミュ力モンスターだもんね!」 「うるせぇ」 夏季講習の休み時間、友達は私をからかう。 そういえば、私と部長が仲良くなったのって……。 「あ、同じクラスの桐谷くんだよね! 桐谷くんも演劇部なんだ! 同じクラスの人がいて良かったー! 仲良くしてね!」 「俺の名前….…」 「私さ、クラスの皆の名前はすぐ覚えちゃうんだ! 皆と仲良くなりたいからさ!」 「俺とも?」 「そうだよ! 友達っ」 演劇部の体験入部の時に私からガンガン話しかけてたな。 その後もクラスや部活でたくさん話しかけて。 気付いたら今に至る。 「はぁ、今日も練習頑張ったねー! セット作りも進んだし!」 「帰ったら勉強しなきゃな」 「さすがガリ勉くんだね」 「受験生だしな」 「けど、ちょっとくらい寄り道したら? 息抜きに」 「息抜き……か」 「そうだ、タピオカ飲みに行こ?」 「タピオカだと?」 「部長、飲んだ事無いって言ってたし! 友達は彼氏に会いに行っちゃって暇だから付き合って?」 練習を終えると、私は部長を誘う。 「タピオカくらい….…なら」 「やった! やっぱ一度はタピオカ経験しないとね!」 「そういうものなのか?」 「そういうもん!」 本当はまだ、私が誰かと一緒じゃないと苦しいだけなんだけど。 部長の事、振り回してるよね……私。
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