彼等はまだ青春の狭間にいる。

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「莉乃ってさ、唯一部長をびびらないよね」 「んー……口うるさいし、厳しいとこが私のお父さんに似てるからかな?」 だから、ポンポン何でも言えるのかも? いじると面白い奴だし! 「まあ、莉乃はほぼ男子だもんね」 「うるせぇ! 名前は可愛いもんっ」 「名前だけねっ」 「こらっ」 友達とふざけ合いながら部活に励むのも学園祭が終わるまで。 高校3年間って意外と早いんだなぁ。 けど、人魚姫って最後は泡になるんだよね。 実は昔からあまり好きではない話だった。 いつだって物語はハッピーエンドが良い。 私自身はどうなんだろう? ハッピーエンドが良い……出来る事なら。 そう思って18年。 バカみたいに長ったらしくてどうしようもない片想い。 『学園祭公演の主役決まった! 人魚姫役!』 『良かったじゃん、おめでとう! けど、莉乃が人魚姫って 笑』 『笑うなー! 本気出したら私だってママに似て美人なんだからね!』 部活の休憩時間に入ると、タクマに早速報告した。 いつだって嬉しい事があれば一番にタクマに伝えてきた。それはタクマも同じ。 『絶対観に行く。最前で観てやるから練習頑張れ』 タクマからの応援メッセージに胸が熱くなる。 最前で観てくれるんだ、恥を晒さないよう立派な主演女優として頑張ろう! 「何にやけてんの? 莉乃?」 「な、何でもないっ」 「まーたタクマくん?」 「し、しーちゃん!」 演劇部で一番仲が良いしーちゃんにはタクマの事を話していた。 「告白、しちゃえば良いのに」 「今は大事な時期だから」 「でもさぁ、タクマくん狙いの女子って結構居るよ?」 「へ?」 「B組の女子マネの子! 最近よくタクマくんと仲良いし」 「あいつ、女の子にもフレンドリーだからね!」 「莉乃は油断しすぎだって」 「あいつ部活バカすぎてずっと彼女居なかったんだよ? 今更……」 「もう!!」 本当はずっとずっと怖かった。 タクマが誰かのモノになる日が来るのが。 私はずっとずっとタクマが好き。 だけど、タクマの気持ちは分からない。 ずっとずっと微妙な距離感だから。 幼馴染として出会わなければもっとスムーズに進んでたのかな? 私は臆病すぎたんだ。
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