彼等はまだ青春の狭間にいる。

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「おはよっ。主演女優さん」 「ちょっとー! バカにしてるでしょ?」 翌日、教室に着くなりタクマにからかわれた。 「莉乃なら主役行けると思ってたよ。人魚姫は意外すぎたけど」 「皆してバカにする。私をバカにするって事はキャスティングした部長をバカにしてるって事なんだからね?」 私の発言が聞こえたのか、同じ教室に居る部長が咳払いした。 「うわ、やべ」 「タクマ、声デカすぎ」 「けど、人魚姫役って事は……髪とかどうすんの?」 「エクステつけてロングにする。姫感プラスしなきゃだからね」 「莉乃がロングってレアじゃね?」 「小さい頃以来だからねー! 久しぶりだわ」 「まあ、莉乃は短い方がらしくて好きだけどな!」 「タクマってさ……すぐそういう事言うよね」 「んー?」 前にも美容院で髪どうするか悩んでたら同じ事言われて結局短い髪を貫いてる単純な私。 「金髪だし、チャラさを際立ててる」 「けど、彼女いない歴18年だからな」 「えらいえらい」 「部活バカすぎたな、俺」 「脳が筋肉で溢れてんじゃないのー?」 部活バカのままで良い。 私の為に席を空けておいていて欲しい、どうか、どうか。 お願いだから……私の為に。 「島谷莉乃っ! 今日も練習あるから遅刻するなよな?」 「分かってるって部長ー! あ、違った。パパ!」 「誰がパパだ、誰が」 「だって私のパパ役じゃん!」 「莉乃のパパが演劇部の部長くん……やば、めちゃくちゃウケる」 「何がおかしい!?」 「めちゃくちゃ楽しみ! 演劇部の舞台」 部長と私のやり取りを聞いてタクマは笑う。 人魚姫の結末は悲しい悲しいものだけど、私はそうはさせたくない。 ハッピーエンドじゃなきゃ嫌なの。 だけど、常に不安は抜けてくれない。 「タクマくん!」 「おー、どうした?」 「これ、昨日言ってたチケット! 取れたから」 「マジ!? サンキュー!!」 昼休みになると、隣のクラスの女の子がタクマの元へ。 「やっぱり有川さん、可愛いよなぁ」 「野球部にもあんなマネージャー欲しい」 男子達は彼女を見てにやにやしている。 最近、マネージャーになった子だっけ。 確かにアイドルグループにいてもおかしくない可愛さだな。 私よりずっと髪が長いし、横を通っただけで良い香りがしたし、女の子らしい雰囲気だなぁ。 タクマの周りは可愛い女の子がたくさん居る。 もう慣れても良いのに、そんな子が彼に近づく度にもやもやはする。
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