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「てか、部長。台本、忘れてんじゃん」
「あ、しまった……」
「取りに戻る?」
「戻る必要は無いから」
「けど、練習……」
もしかして、私に気を使ってくれたのかな?
いつもしっかりしてる部長が台本を持たずに出て行くなんてらしくない。
「ね、部長! 私、購買行きたい!」
「は? 購買?」
「唐揚げたっぷりサンド食べたい!」
「なんて高カロリーな……」
「私、奢るからさ!」
「俺は別に……」
「ありがとう。教室出たらちょっと気持ち、楽になった」
何で幼馴染のあいつは気付かないのに部長は気付いちゃうかな、変なのっ。
「この量は異常だな……」
「男子なんだし、このくらい食べないと! だからひょろいんだよ、部長は!」
「ふ、太りにくい体質なだけだ」
「今の部長になら私、余裕で勝てる自信あるよっ」
「力はお前よりはある」
「本当かなぁ?」
「男だからな」
「ね、唐揚げたっぷりサンド美味しい?」
「まぁ、悪くはない」
「でしょ! いつもは美味しいんだけどな……」
何で味、感じないんだろう。
「無理して明るくすればするほど辛いだけだ」
「メイクでボロボロな顔、頑張って頑張って隠したけど、泣いたら台無しだから」
「そしたら、俺の眼鏡貸す」
「だ、だめ! 部長、眼鏡無いと何も見えないんでしょ?」
「問題無い」
「やっぱ、良い奴だね! けど、私は大丈夫。いつかは向き合わなきゃいけない問題だったから!」
悪いのは行動出来ず、立ち止まったままだった私。
幼馴染だからと言い訳ばかりつけて逃げてた私。
「そうか。けど、無理はするな。俺は話……聞くくらいしか出来ないけど、いつでも聞いてやる。主演女優にずっと不調でいられたら困るしな」
「ありがとう、部長。部活は部活でちゃんとするから」
部長にかっこ悪いところ見せまくって情け無いな。
「莉乃、話の途中で消えるなよ」
教室に戻ると、タクマは不機嫌な顔で私を迎える。
「タクマ! 私さ、暫く部活に専念する。だから、サッカーの試合の応援にももう行けないし、一緒に遊びに行ったり出来ない!」
「えっ……なんだよ、それ」
「タクマにはあんな可愛い彼女が居るんだから。私と今迄みたく深く関わるのは良くないと思うんだ!」
本当はこんな事言いたくない。
だけど、自分の為に嘘をつく。
タクマを遠ざけないと、きっと私はダメになる。
もう想い続けたって無謀なんだよ、莉乃。
諦めなきゃだめ……。
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