半分足りない

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半分足りない

魂なのか心なのか 引き裂かれる痛みがあることを知ったのは いつのことだったか 朝焼けの鮮やかさと、夏の夜明けの静けさ 薄青と橙、黄色が混ざり合い あの頃は、近年のような酷暑ではなく 窓を開けて、座ったベッド、少し涼しさを運ぶ風で眠りにつけた。 それでも、半身を剥がされたような、 「喪ってしまった」という傷みは、誰にも告げられずに空っぽになった「私の半分」が確かにこの世界からいなくなってしまったのだと、それだけがリアルだった。 ひと晩泣き明かし 真っ暗な夜が去り 明けない夜はなく 泣きすぎた私は腹が減り 悲しみを抱えても 身体は、肉体は、 「生きたい」と 「生きろ」と 食い物を求めた 辛くても 悲しくても 痛みを抱えても それでも生きろと 半分足りない 足りない半分 どうして足りない なぜ なぜ それでも 生きていく 足りない半分を抱えて 生きていく
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