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「何も壊さなくても……」
引きちぎられた無残な宝石がベッドに散らばる。
「おまえには分からないのさ」
征司は装飾をなくした僕の手首を掴んで叩きつけるように言った。
「壊さなきゃならないものがあるってな」
「痛っ……」
突然首筋に歯を立てられた。
ベッドに横たわっているのに膝がカクンと沈む。
「——思っていたより重症だった」
次の瞬間、耳元に重い吐息が囁いた。
「え……?」
思わず跳ね起きそうになる僕をもう一度ベッドに沈めて、征司は首を横に振る。
「さっき……検診では順調だったって言ったじゃないですか……」
「そういうことじゃない。問題は——」
噛んだ唇から漏れる傲慢な声音が
「ここだ」
己の心臓を指すと微かに切なく掠れる。
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