episode245

20/30
前へ
/30ページ
次へ
「何も壊さなくても……」 引きちぎられた無残な宝石がベッドに散らばる。 「おまえには分からないのさ」 征司は装飾をなくした僕の手首を掴んで叩きつけるように言った。 「壊さなきゃならないものがあるってな」 「痛っ……」 突然首筋に歯を立てられた。 ベッドに横たわっているのに膝がカクンと沈む。 「——思っていたより重症だった」 次の瞬間、耳元に重い吐息が囁いた。 「え……?」 思わず跳ね起きそうになる僕をもう一度ベッドに沈めて、征司は首を横に振る。 「さっき……検診では順調だったって言ったじゃないですか……」 「そういうことじゃない。問題は——」 噛んだ唇から漏れる傲慢な声音が 「ここだ」 己の心臓を指すと微かに切なく掠れる。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

49人が本棚に入れています
本棚に追加