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「もう少し力を抜いて。恋人だと思ってやってみましょうか」
女性アシスタントが僕を一段高い所に立たせて
征司の肩に身体を預けるポーズをとらせる。
「まあ難しいですよね。お兄様相手にこんなことしないですもんね」
「ああ……ええ……」
同情するような笑みを浮かべながら。
彼女はジュエリーの位置を調節し僕の両腕を征司の首筋に巻き付ける。
「安心してください。お兄様は後ろ姿しか映りませんので」
カメラマンはファインダーを覗き込みながら。
天宮家の長男を気遣い低姿勢で声をかける。
そりゃ征司はいいさ——。
後ろを向いているんだから。
燃えるような貴公子の嫉妬の眼差しを受け止めなくてもすむ。
「どうぞお気になさらずに」
低く答える征司の声音が僕の耳元すれすれに響いた。
途端——。
「どうした?鳥肌が立ってるじゃないか」
「なんでもありません……」
僕の身体は馬鹿正直にその声に反応してしまう。
「それならいいが」
「ン……」
なにげなく背中這う指にも。
僕の腰を引き寄せる手の力加減にも——。
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