episode245

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「もう少し力を抜いて。恋人だと思ってやってみましょうか」 女性アシスタントが僕を一段高い所に立たせて 征司の肩に身体を預けるポーズをとらせる。 「まあ難しいですよね。お兄様相手にこんなことしないですもんね」 「ああ……ええ……」 同情するような笑みを浮かべながら。 彼女はジュエリーの位置を調節し僕の両腕を征司の首筋に巻き付ける。 「安心してください。お兄様は後ろ姿しか映りませんので」 カメラマンはファインダーを覗き込みながら。 天宮家の長男を気遣い低姿勢で声をかける。 そりゃ征司はいいさ——。 後ろを向いているんだから。 燃えるような貴公子の嫉妬の眼差しを受け止めなくてもすむ。 「どうぞお気になさらずに」 低く答える征司の声音が僕の耳元すれすれに響いた。 途端——。 「どうした?鳥肌が立ってるじゃないか」 「なんでもありません……」 僕の身体は馬鹿正直にその声に反応してしまう。 「それならいいが」 「ン……」 なにげなく背中這う指にも。 僕の腰を引き寄せる手の力加減にも——。
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