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征司の唇が頬を掠め斜め上から声がする。
「九条敬の身体の一部が移植されたせいか?それとも一度死にかけたからなのか?」
まるで心の声だ。
自分自身に問いかけるように征司は囁く。
「俺が無性におまえを独り占めしたいのは——」
ドクンと心臓がはねた。
顔に出しちゃいけないと思いながらも——。
僕は息を飲み、想わずカメラから征司に視線を移してしまう。
「こっち見んな」
冷たい目。
無表情を貼りつけているのは自分が躊躇っているからなのかもしれない――。
「いいね。今の表情!」
カメラマンはプロだ。
ほんの一瞬。
僕の頬が熱を持ち、素顔を晒した瞬間を見逃さなかった。
「今のでOKです!お疲れ様でした」
声がかかったと同時。
征司は抱いていた僕の身体を押しのけ素知らぬ顔で傍を離れてゆく。
「えっ……」
そしてまたカメラマンの隣に鎮座していた九条さんも。
これ以上耐えられないとばかりに席を立つ。
「ちょ、待っ……!」
「お疲れさまでした。すぐ外しますね」
喉元まで出かかった言葉を仕方なく呑み込んだのは——。
「ああ。はい……」
駆け付けたアシスタントの女の子が僕の身体にガウンを着せ、丁寧にジュエリーを外し始めたからだ。
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