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このキスは何?
深く考えるより先にいっぱいに埋め尽くされる。
両手で僕の両耳を塞ぐようにして余計なものを遮断する。
そうすると僕の中は征司が与える水音だけに満たされる。
やがて背骨がまっすぐでいられなくなって後ろに反る。
それを追いかけて熱い舌が喉元までくる。
「ンンッ……ハァッ……」
ごく自然と漏れ出す吐息さえ征司が呑み込む。
そしてもっと強引に開かれるんだ。
頭が真っ白になって
恥ずかしげもなく涎が口端を伝って
動物が呻くように何度も喉を鳴らして。
そんな屈辱的な様を晒しているのに。
なんでだろう気づけば自分から応えてしまっているのは――。
九条さんはどこにいったんだろう——?
考えが波のように返す度。
征司はそれらを打つ消すように激しいキスで僕の頭をからっぽにした。
「続きができるところへ行くか?ん?」
「それは……」
「どうなんだ?」
やがてこう考えるようになる。
「今日はこうやって——全身リップサービスしてやっても構わないぞ?」
「え……?」
征司と話し合って先に帰ったなら今日はいいか。
今日はこの流れに身を任せてしまってもいいんじゃないかと。
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