episode245

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「それじゃ聞くけど——」 征司の瞳の中に九条さんの面影はもうない。 当たり前だ——。 「彼、本当に自分から帰ったの……?」 臓器を移植したから彼が征司の中にいるなんてありえない。 全ては快楽が見せた幻だったんだ。 「本当のことを言ったら、おまえ俺に感謝するぞ」 「どういうことですか……?」 汗が冷えて身体が冷たくなってきていた。 だけど頬は火照ったまま全くバランスがとれていないみたいだ。 「そろそろ自分は身を引いた方がいいかもしれないと——あの男の方から言ったんだ」 「……え?」 僕は勢いづいて半身起こし、無表情に征司を見下ろす。 「聞こえたろ?ようやく真実を見つめたのさ」 「嘘……」 「嘘じゃない」 九条さんが? どんな真実を見つめて……僕を放り出した? 「信じない!そんなの信じないよ!」 「屋敷に戻れば分かるさ——最も今夜帰す気はないけどな」 「いやぁっ……!」 悲鳴は塞ぎこまれ再び組み敷かれる。 征司は一層手荒に僕を捻じ伏せた。 「イヤだよ……放してっ……!」 すぐに理解した。 「黙れ。気を失うまで抱いててやるから——」 僕を行かせないのは――残酷な現実を見せないための——征司の最大限の優しさだってことくらい。
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