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九条さんは可愛い膨れっ面をしていたけれど。
ジュエリーを取り替え終わったアシスタントが行ってしまうと。
「僕を困らせて楽しい?」
そっと僕の手を取り破顔した。
「楽しいよ。だっていつもあなたは」
「僕が何さ」
僕の手首を彩る宝石に触れ
九条さんは天使を見たように優しく微笑む。
「あまりに僕のことに一生懸命で——」
征司に肝臓をやったかと思えば。
柄にもなく張り合って。
「大人げなくて恥ずかしい?」
「そう思ってるの?」
僕は逆に彼の指先を撫でながら問いかけてみる。
本当は気づいてるんだ。
そう思っているのは僕じゃなく自分だって。
「そうだね。君のことで意地を張ってしまって。冷静さを失って……つまり」
「自分らしくない?」
「違うな。情けないけど本当の僕はこんなもんさ」
眩しそうに目を細めて僕を見つめ
「皮肉だね。一番好きな人の前でカッコいいところが見せられないなんて」
自虐的に小さく肩をすくめる。
「あなたはいつだって十分カッコいいよ。僕が保証する」
僕はそっと彼の指先に口づけて上目遣いに彼を見つめた。
「でもさ、あなたと征司お兄様が面と向かって対立してるのって、なんていうかあんまり良くないと思うんだ。誰にとっても」
「考えてみるよ――と言いたいところだけど」
言いなが九条さんの目元は険しくなり、視線は僕の背後、スタジオの入り口へと向けられる。
「あちらさんはそうは思ってないみたいだ」
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