episode245

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九条さんは可愛い膨れっ面をしていたけれど。 ジュエリーを取り替え終わったアシスタントが行ってしまうと。 「僕を困らせて楽しい?」 そっと僕の手を取り破顔した。 「楽しいよ。だっていつもあなたは」 「僕が何さ」 僕の手首を彩る宝石に触れ 九条さんは天使を見たように優しく微笑む。 「あまりに僕のことに一生懸命で——」 征司に肝臓をやったかと思えば。 柄にもなく張り合って。 「大人げなくて恥ずかしい?」 「そう思ってるの?」 僕は逆に彼の指先を撫でながら問いかけてみる。 本当は気づいてるんだ。 そう思っているのは僕じゃなく自分だって。 「そうだね。君のことで意地を張ってしまって。冷静さを失って……つまり」 「自分らしくない?」 「違うな。情けないけど本当の僕はこんなもんさ」 眩しそうに目を細めて僕を見つめ 「皮肉だね。一番好きな人の前でカッコいいところが見せられないなんて」 自虐的に小さく肩をすくめる。 「あなたはいつだって十分カッコいいよ。僕が保証する」 僕はそっと彼の指先に口づけて上目遣いに彼を見つめた。 「でもさ、あなたと征司お兄様が面と向かって対立してるのって、なんていうかあんまり良くないと思うんだ。誰にとっても」 「考えてみるよ――と言いたいところだけど」 言いなが九条さんの目元は険しくなり、視線は僕の背後、スタジオの入り口へと向けられる。 「あちらさんはそうは思ってないみたいだ」
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