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「なんで泣くんだよ」
「だって……。好きって言ってくれたんだもん」
ずっと聞きたかった言葉。
飯田くんはいつも大事なことを言葉にしてくれなかったから。
飯田くんは目を見開いて、そしてまた困ったような顔をしたと思ったらすっと影が落とされる。
気づけば私はぎゅっと抱きしめられていた。
首筋に顔を埋めて、囁かれる。
「本当にごめん。君をずっと……不安にさせてたのかな。俺に……反省することが多過ぎて……謝りきれない」
抱きしめられたまま、ふるふると首を振る。
もういいの。
たった一言なのに、それだけで身体中が満たされて温かくなる。
いつも優しい彼。
でも今日は、もっと優しさをもらっているよ。
「迷惑じゃなければ、これからも俺と一緒にいてほしい」
胸を押してはっと顔をあげると、また困ったような顔のままの飯田くんが私の目尻をそっと指ですくってくれた。
「ダメ……かな?」
ダメじゃないよ。
いいに決まってる。
「あ、あのね。私のこと、名前で……呼んで」
思いきってそう言うと、飯田くんはすこしハニカミながら囁く。
「……詩織。好きだよ」
「……私も」
そのまま飯田くんの影が降ってきて、私たちはそっと唇を寄せた。
とってもとっても幸せで甘いキスだった。
一方通行だと思ってた私の気持ち。
お互いが気持ちを確認できたとき、繋がる心は混ざり合い、そして甘く溶けていった。
【END⇒番外編へ続く】
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