◆番外編◆

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水族館なんて何年ぶりだろう? 学生の時に校外学習で訪れたきりかもしれない。 いろいろリニューアルされたのか、思い出にある水族館とは大分違っていてとても新鮮だ。 「水族館なんてすごく久しぶりだよ」 「俺も。だから楽しみにしてた」 ”水族館を楽しみにしてた”という言葉を、私とのデートを楽しみにしてたに勝手に脳内変換して、にんまりしてしまう。 我ながら都合がいいなと思うけど、幸せな気分になるんだから安いもんだ。 入るとすぐに大きな水槽がでーんと迎えてくれる。 たくさんのイワシが群れをなして大きな渦を作っていた。 「すごい!」 「圧巻だね」 目の前をイワシの大群が通りすぎるたび、まわりのお客さんたちからも歓声が上がる。 「見とれちゃって前に進めないね」 イワシの泳ぎに目を奪われながら言うと、飯田くんは笑いを含んだ声で言う。 「喜んでもらえてよかった。さあ、まだまだ先は長いよ」 私を次の水槽へ促す。 テレビでよく見るようなトンネル水槽を抜けると、いろいろな魚たちが泳ぐ水槽に着いた。 あれはサメ? エイもいる? 何かわからないけど大きい魚! 「見て見て!亀がいる!亀に乗って竜宮城行きたい!」 「どうやって呼吸するの?」 子供のようにはしゃぐ私に、冷静なツッコミを入れてくる。 「もうっ、夢のないこと言わないでよ」 頬を膨らます私を見て可笑しそうに笑う。 からかわれているのに、飯田くんの言い方は優しくて全然嫌じゃない。 そういうところも好きなんだよなぁって、改めて思ってしまう。
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