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「ねぇ、君死ぬの?」
ギクリとして振り返ると同じ高校の制服を着た男子生徒が立っていた。
髪が顔にかかり前髪の合間から見える双眸は覇気がなく無表情。
暗く静かな路地からこちらを見ているその姿はまるで悪魔のように見えて私は一瞬言葉を詰まらせる。
「なんで?」
「そんな橋から身を乗り出してれば誰だってそう思うだろ。」
男子生徒はつかつか歩いてくると私の腕を後ろから掴んだ。そしてバランスを崩した私の耳元で囁く。
「死にたいなら俺が殺してやろうか?橘有紗。」
「なんで名前...っ!」
ゾワっとして掴まれた腕を振り解いた。
「うちの学校じゃ有名人だろ。両親は世界的ピアニストで自分もコンクールに出れば必ず入賞。先生や友達から人望暑くて頼りになる委員長殿。」
「........。」
「それで?人気者の橘有紗がなんで橋から飛び降りようとしてんだよ。」
「なっ!ただ落とし物したから探してただけ!」
「探し物ねぇ。真っ暗で川の中なんて見えねーけど。」
握った手の平に冷や汗がじわりと滲む。
私は口を結んで冷たく目を細めた。
「へぇそんな怖い顔もできるんだ。」
「あなた...悪魔みたいな奴ね!」
「何とでも言え。じゃーな。」
悪魔は手をひらひらと顔の横で振りながら静かに暗闇の中に消えていった。
「............誰あれ。」
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