Età della luna 1 Conducono a Roma.

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「人狼が出るという噂があると御者が言っていましたが」  アベーレは窓の外を眺めた。  夕べ馬車から降りた庭の一角は、食堂広間の窓からも見える位置だ。  到着した真夜中とは違い、今は陽光が薄く照っている。 「夕べのあの音は、教会の鐘の音ですよね?」  不意に思い出しアベーレは言った。 「そうね、多分」 「あんな夜中に鳴らしているということは、随分と前からなのかな。その噂は」  アベーレは頬杖を付いた。その格好のまま葡萄酒を口にする。 「伯父上がこちらに着かれたのは、いつ頃でしたっけ」 「あなたがうちの屋敷に来てここに誘ってくれた時に、伯父様が先に到着しているはずと聞いた気がするけど」  ヨランダは、パンを千切りながら微笑した。 「ああ……そうでしたっけ」  アベーレは顔を上げた。 「それなら、いつ頃かなど姉上は知るはずがないか。……申し訳ない」  苦笑してアベーレは言った。  飲んでいた葡萄酒のグラスを、コトッと音を立て置いた。 「到着したと手紙をいただいたんです。土地勘の無い所なので、念のため荷物の中に入れたはずだ」 「伯父様はだいぶ前にいらしていたの?」  品良くサラミを指で摘まみヨランダは言った。 「ここの土地がまだ売りには出されていないと気付いた時点で発ったみたいですよ。放置されていた所ですから、今まで取っていたはずの税収の流れを調べて、改めて押さえておくって」 「伯父様、相変わらずでいらっしゃるのね」  ヨランダはクスクスと笑った。  つられて笑おうとして、ヨランダが最近まで女子修道院にいたことをアベーレは改めて思い出した。  長いこと会っていなかった親戚が何人もいるのだと思った。  本来なら、その親戚たちにはその後も会わせられないまま、他家に輿入れしていたところではあるのだが。 「相変わらずですよ、伯父上は。若い頃に破産を経験していますからね。また再興する気満々です」  だからこそ伯父の所に身を寄せ、ともに再興を目指してみようと思ったのだが。  どこへ行っているのか、とアベーレは溜め息を吐いた。 「教会で、火をいただけるかしら」  鐘の音が聞こえた方向を見て、ヨランダが言った。
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