≪とある兵士≫第94話 プランツ王国のとある兵士⑥……プランツ革命

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≪とある兵士≫第94話 プランツ王国のとある兵士⑥……プランツ革命

(とある兵士視点)  【プランツ王国】の王都プランツシティでは、大混乱が起きていた。  その理由は、プランツ王国軍主力が魔王軍との戦闘の末、壊滅したという情報が入ってきたからである。  まあ、僕たちは事前に予想していたことではあるが……。 「み、民衆よ起て! こ、国王プランツ5世は魔王軍に敗北した。も、もはや王家に僕たちを守る力などない。この王都を守る兵士がいないからだ! 無責任な国王プランツ5世は功を焦り、王都から根こそぎ兵を動員したのだ。僕たち市民を守る意思があるならば、防衛に徹するべきだったのだ」  と、僕は大声でそう言った。  アドリブでそれらしい単語を並べて話していて恥ずかしい限りだが、この王国軍主力の敗北による王都の混乱のおかげか、民衆は僕の話に耳を傾けてくれている。  だんだんと、自身の演説が気持ちよくなってきて、次第に滑らかになってきているのがわかる。  結局のところ僕は相棒のレームの強迫に屈し、茶番のような革命を実行することになってしまったのだ。 「無責任な王家に代わって誰が僕たち民衆を守ってくれるのか? それは【教会】か? 教会騎士団はこの王都にはいない。【魔王領】と隣りあわせなのにも関わらずにだ! 結局のところ、誰も本気で僕たち民衆を守ろうとはしない。であるならば、僕たち民衆が一丸となって立ち上がり、自分たちで自分たちを守らなければならないのだ! ここに王権に代わって民衆がこの国の最高権力持ったものと宣言する! すなわり革命政府の樹立を! 」  僕がそこまで言い切ると、至るところから歓声が上がった。相棒のレームの言っていたサクラとかいう奴らの仕業なのだろうが。しかし一度歓声が上がると伝播するように広がっていった。 「革命政府の代表はあんたしかいない! 」 「そうだそうだ。俺たちはあんたについて行くぜ! 早速、王宮を陥としてしまおう。王家やそれに従う者たちは皆殺しだ! 」  ≪サクラ≫と思わしき者たちがそう言った。  やはりあくまでも革命政府の代表に僕がなるような流れに持っていかれているようだ。最終的には民衆の期待を裏切って併合条約調印をさせられることがわかっている僕からすれば、苦痛でしかない。 「よおおし! 敵は王宮にあり! 王宮を陥とし、名実ともに民衆がこの国を治めるのだ! 」  あっと言う間に暴徒化した民衆を引き連れて、僕は王宮へと向かった。極わずかに残っている兵士たちはその暴徒に加わるか、又は降参している。王宮内部には容易に侵入することができた。  僕と【サクラ】らしき連中が最先頭の集団となって集まっている。  これはギヨーム王太子を捕らえる際に危害が加えられないようにするために予め、決めていたことである。  民衆を煽りつつも、この革命は茶番に過ぎないのだ。 ※ (プランツ王国の王太子、王女視点)    【プランツ王国】の王都プランツシティで民衆が暴徒化し始めた頃、その王宮ではギヨーム王太子とテオドラ王女が話をしていた。 「ギヨーム。お父様の率いる王国軍は魔王軍に敗北したのは知っていますね? 」 「当然でございます姉上。私も今先程、その報告を部下から聞きました」  と、テオドラの問いにギヨームは答えた。  そしてテオドラがいう。ギヨームが予想していることを……。 「王太子である貴方には酷なことですが、もうじき魔王軍がこの王都を占領しにやって来ます。その際には大人しく投降してください」  テオドラがそう言った。  テオドラは魔王軍のスパイだ。こういう発言をするのは当然なのだろう。 「姉上。それは出来ません。私にも考えがあるのです」 「そうですか。では今この場で貴方を捕らえるとしましょう」  王女は腰にぶら下げていた杖を手に持ちそう言った。  実力で言うことを聞かないのであれば、実力行使ということだ。一緒に居た兵士長のボルグも剣を取り出して構えている。 「姉上。僕を捕らえるのは、もうじき生まれるであろう革命政府の者たちですよ。今頃、王都では民衆が蜂起していることでしょう。姉上が魔王軍に所属していることは部下からの報告で知っています。そしてそれは今はどうでもよいことです。今は革命政府の魔の手から逃げるか否かですよ」  ギヨームはそう言った。  ギヨームからすれば革命は、自分たちで仕組んだことなのだが……。 「民衆が蜂起ですって? ボルグ! 外の様子を」 「畏まりました」  ボルグは外の様子を確かめに行った。
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