第104話 ゴブリン退治①

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第104話 ゴブリン退治①

 ここから見える限りでは、ゴブリンは20人程度がいる。  私も、武装するゴブリンたちの様子を伺うため、ブルレッド君とユミを追いかけ、馬車列の先頭の馬車付近までやってきたのであった。 「≪ゴブリン人の盗賊共≫は、弓やこん棒のようなもので武装しているようだな」 「ええゴブリン共の標準装備ですね。それと、この街道の左右に広がる森に、それぞれ1個分隊が偵察活動を行っており、残りの2個分隊は、馬車列の護衛を行っております」 「そうか」  我々を護衛している小隊は、5個分隊で構成されている。  その配置はと言うと……まずここから見て、正面に見えるゴブリンと対峙するのが1個分隊である。次に、左右それぞれの森に各1個分隊の計2個分隊、そして馬車列の護衛が、残り2個分隊だ。 「放ち方用意! 」  分隊長の伍長がそう言うと、その伍長を含め10名の兵が魔法杖を構える。 「放て! 」  そして、一斉に≪貫通的威力による攻撃魔法≫を放つ。1秒も経たない内に、ゴブリンたちが斃れていくのであった。  それでも尚、ハズレの攻撃もあったのだろう。  まだ半数を超える数のゴブリンが健在のようである。しかし数秒が経ち、再び分隊長の「放て! 」という掛け声とともに一斉放撃が行われた。  またもやゴブリンたちが斃れていくが、彼らは同時に矢を放ったのであったのである。 「痛てっ! 」 「くっ! 」  2人の兵士に矢が刺さった。 「くそ! 敵の攻撃を受けるとは。衛生兵、毒の可能性も考慮しつつ応急手当を! 」  分隊長が叫ぶと、分隊付衛生兵は2人の兵士を順番に、まずは矢を抜き取り、次に中級回復魔法を放ち、さらに解毒魔法を放つのであった。  中級回復魔法の効果で、直ぐに傷が塞がる。  とはいえ単に傷が塞がったことで止血ができただけであり、出血した分の血液をも元に戻すことは出来ない。  場合によってはこの2人の兵士は後ほど本格的な軍病院へ送られることになるだろう。  とはいえ、2人とも元気そうではあるが。  さて、2度の一斉放撃で生き残ったゴブリンの方はと言えば、戦意を失い四方八方へ逃げていくのであった。 「これではユミの出番もなかったか」 「そうだね。でもさ、私を鍛えるってことならカルロが模擬戦の相手を務めてくれても良いじゃないの? 」  それもそうか。  そもそも私自身が鍛えればいいわけか。それに、魔物や野生のゴブリンばかり倒していても対人戦とはやはり勝手が違うしな。  表向きは魔王を倒すという形だが、私としては個人的には天使共と対峙してもらいたいと思っている。  どちらにせよ、結局のところ対人戦に慣れてもらう必要があるだろう。 「そうだな。今日の宿泊地で早速訓練するか? 」 「うん。よろしくね。ところで、ゴブリンは1人も倒していないけど、約束は有効だよね? 」 「おう。言ってみろ」 「じゃあ私について来て。出来ればこの分隊の人たちも一緒に。場所は直ぐ近くだよ」  ついて行くだと?  それも分隊と共にか……。  まあ、ついて行くこと自体は無理難題ってわけでないが、ついて行った先の話が問題だがな。  まさか罠ってことはないだろうな?   考えてみれば、ユミの態度があの私との戦闘後に急変したのは、とても怪しい。我々を安心させるための演技かもしれない。  まあ良い。考えても無駄だ。  とりあえず、ついては行こうか。罠なら全力を以て阻止する。罠でないとしても無理難題な話であれば、予定していた通りヒステリックを演じて誤魔化せば良い。 「分かった。分隊長。今の話の通りだが良いかな? 」  私は、分隊長にそう聞いた。 「ええ。護衛の分隊はおりますし、正面のゴブリン共も退散しましたので問題ないかと存じます。念のため小隊長にお伝えしてもよろしいでしょうか? 」 「構わん。手短に頼む」 「かしこまりました」  そして小隊長からの承諾もあり、私たちはユミについて行くのであった。
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