第105話 ゴブリン退治②

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第105話 ゴブリン退治②

 私たちはユミについて行き、森の中へと入った。進む方向を正面とすれば左側の森だ。しばらく散策したものの、何も見つからず結局は右側の森へと移る。  そうこうしている内に、30分くらいは経過してしまっている。次第に私も苛立ちを感じ始めていた。 「一体どこまで連れていくつもりなのだ。そもそもユミも初めて通るであろうこの道沿いに目的の場所があるのか? 」  目的があるとすれば、例えば人目のつかない場所へ誘き出して暗殺の機会を窺うため、ということが考えられるが、1個分隊もこうしてついて来ているので、またそこが謎だ。 「もうすぐの筈だよ」  と、ユミが言った。 「もうすぐの筈……? 」 「うん」  どういうことだ?  まるで以前にも、この辺りに訪れたことがあるかのような言い回しが気になる。  それとも、【魔王領】について記されている本に何かこの辺りのことでも書かれてあり、それを根拠にこの散策が始まったのであろうか?  「あった」  ユミがそう言うと、目の前には大木が生えており、そしてその根元を見ると大きな洞穴が目に飛び込んできた。 「何だ。この洞穴は……」 「この洞穴の先に進むとしたら、瞬時に応戦できる態勢で挑んだ方が良いと思う」  と、ユミが私の疑問をよそに、そう言った。 「いや、だから何なのだこの洞穴は! 」 「ゴブリンの巣って言ったところかな? たぶんさっきのゴブリンたちもここを拠点にしていたはずだよ」  何故、ユミがここにゴブリンの拠点があると判ったのだ?  あの本にゴブリンの習性についても書かれていて、やはりそれを根拠にこうしてゴブリンの拠点らしき場所を発見するに至ったのであろうか? 「ゴブリンの拠点がこんな所にあるってよく判ったもんだな? 」 「まあね。カルロがくれた本にゴブリンの習性について書かれていたの。基本的にゴブリンは巣の近くでしか人を襲わないって」 「なるほど。さっきゴブリンが出たという話を馬車の中で聞いた時から、この近くにゴブリンの拠点もあるのだろうと推測していたわけだな。ユミは」 「そう。ちょっと時間がかかっちゃったけど見つけられてよかったわ」  ユミの言うことを聞いて正解だったな。  まさか、ゴブリンの拠点探しが目的だったとは思いもしなかった。だが、1個分隊を引き連れて来たのは正解かもしれない。 「では早速、この洞穴の中を探索しようと思う。分隊長! 散策中の他の2個分隊に大木の根元も注意深く観察するよう伝えてくれ。洞穴があったら直ぐに報告するようにと」 「かしこまりました」  そして分隊長が電話連絡を終えると同時に、洞穴の中へと入った。  中は案外しっかりと出来ており、所々に松明が備え付けられている。横幅は大人3人が横一列になっても入れるくらいにはあり、高さも180メートルくらいはある。  罠に、そしてゴブリンの奇襲に警戒しながら、前へ前へとゆっくり進む。当然、防御魔法も展開しながらだ。 「矢が飛んで来たぞ! 」  私がそう叫んだ。数本の矢がこちらへ向かって飛んでくるのが見えたからである。そして私たちは一旦そこで立ち止まった。  矢は私の展開している防御魔法を貫くことはなく、地面に落ちた。 「放ち方、用意…………放てぇ!」  分隊長がそう叫び、暗闇の向こうに向かって一斉放撃が行われた。  微かにその向こう側から悲鳴のような声が聞こえてくる。 「よし進むぞ」  再び前進する。  すると、2体のゴブリンの死体が転がっているのが目に入った。 「少なくともこの2体で全てではないだろうな」  私はそう呟いた。 「でしょうね」  ブルレッド君もそう言う。  備え付けれている松明だけでは光が足らないので、彼には照明魔法を展開してもらっている。  それからさらに進むと、大きな部屋のような場所に出た。 「ゴブリンたちだ! 」  中には、10人程度のゴブリンが武装して待ち構えていた。  分隊の一斉放撃が始まり、次々とゴブリンたちが斃れていく。まるで、虐殺のような光景だ。 「もう、良いだろう。だが油断はするな! 」  ひとまず、この拠点の制圧は完了したと考えて良いだろう。
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