≪とある兵士≫第110話 プランツ革命政府の樹立

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≪とある兵士≫第110話 プランツ革命政府の樹立

 予定していたとおり、僕たちはプランツ王宮を占拠し、王太子ギヨームを捕らえた。  その様子を見ていた市民たちは、アホみたいにのぼせ上って、王太子ギヨームを「殺せ!」と連呼するものの、僕は後日開く予定の人民裁判での判決に基づき刑を執行すると宣言し、何とかその場は収めることが出来た。  そして、そこからの展開は早かった。  その翌日……即ち今日、プランツ革命政府の樹立宣言があったのだ。  そして、予定通りに僕がプランツ革命政府臨時代表に就任したわけである。  因みにこのプランツ革命政府は、プランツに新国家樹立が為されたときに解散するという臨時の政府とのことらしい。  レームがそう言っていた。  よって、プランツ革命政府の業務としては、新国家樹立のための諸々の制度作りと、日々の行政活動や国防業務となる。  尚、現在の革命政府の組織体系は次のようになる。  まず、僕が就任した≪革命政府臨時代表≫というポジションがある。  その下に≪臨時行政委員会≫が置かれており、さらにその臨時行政員会の決定を執行する諸々の機関があるわけだ。  ≪革命政府臨時代表≫が国家元首に相当するならば、≪臨時行政委員会委員長≫は首相に相当すとか。  これも、相棒のレームがそう言っていたわけだが……。  そして、この臨時行政委員会委員長という職には相棒のレームが就任した。 「ええっと、革命政府市民評議会選挙の実施ですか? 」  僕は、相棒のレームにそう訊ねる。  だが、彼は僕の言葉には気づかない様子だ。  どうやら相棒のレームは、≪本来は捕らえられてこの場にはいないはずのギヨーム≫と話し合っていたのである。   しかも、今僕が聞こうとした選挙のことについてだ。 「おっと。今俺に何か話しかけたか? 」  と、レームが言った。  気づいてくれたようだ。 「いま、選挙のことを聞こうと思ったんだよ」 「ならお前にも言っておく。選挙が終わり次第速やかに、市民評議会を革命政府臨時代表の名で招集してもらう。開会後は市民評議会議長を評議員同士の互選で決め、議長の就任と同時に革命政府臨時代表のポジションは廃止、革命政府の代表権も議長に移るものとする。さらに評議員の中から日々の行政活動に関する責任者も互選で決めてもらうことになるな」 「けっこう面倒くさいですね」  王太子だったギヨームがそう言った。 「簡単だよ。かつて【魔王領】で起きたことを、そっくりそのままやれば良いんだから。まあ確かに市民評議会を設ける以上は多数決の結果次第では面倒なことになるが、主権者を民衆にする以上はやむを得ないことだ」  と、レームが言う。  ここまで聞いて、レームが一体どういう計画をしているのか全く以て見当つかないが、どうやら【民衆】という代物を、言い訳に使いたいということは何となくわかる。 「わかった。とりあえず、まずは選挙に向けて準備すればいいんだね? 」  僕はそう言った。  今ここで、レームから見放されるわけにはいかない。  殺されるのは嫌だからだ。 「話が早いじゃないか。まずお前自身が選挙に立候補してもらう。革命の立役者だ。当選は間違いないだろう。それと現職の革命政府臨時代表としても、やってもらうことがある。即ち選挙を始めるための宣言などをな」  相棒のレームがそう言う。  僕は早速、準備にかかることにしたのであった。 ※  プランツ革命政府の樹立という情報は、少し遅れてレミリアたちに知らされたのであった。 「プランツ方面はアルムに任せて来たわけだけど、そのアルムからプランツ王国で革命が起こったとの連絡がちょうど今きたの」  レミリアが幹部や、元勇者たちを集めてそう言った。  マリーアやアレックスはレミリア部隊の所属ではないものの、わざわざ蚊帳の外にする必要もないだろう。 「でもレミリアはティアレーヌ様から召集がかかっているわよね? 革命が起こったからと言っても、私たちからすれば大した影響もなさそうだし、引き続きプランツ方面の問題はアレフに任せたままでも良いかと思うよ」  と、ディアナが言う。 「ええ。私はこのまま勇者ユミ一行を連行して魔王城まで戻るつもり。だけど、プランツでの革命は手際が良すぎるらしいわ。まるで前々から決まっていたかのように革命政府臨時代表が就任し、市民評議会選挙の詳細や日程も宣言されたのよ」  当然、この革命には【魔王領】の国防大本営が絡んでいるわけだが、現時点ではレミリアたちはそれを知る由もない。  だが。 「何だか【魔王領】で起こった革命を思い出します」  そう言ったのは、魔物使いのアレックスだった。  そして続けて言う。 「あの革命では、天使共が絡んでいました。もしかて今回のも天使共か或いは【教会】が絡んでいるのでは? 連中はプランツ王国軍の主力が敗北した今、王太子ギヨームが降伏に応じやすい状況だと考えたのです。ここで新たに国王を立てるよりかは、民衆に火をつけて、そしてその民衆たちによって国家を運営させる。そうすれば血気盛んな民衆たちを相手に俺たちは対峙することになります」  アレックスはそこまで言うと、最後にこう一言付け加えた。 「軽く見ない方がよろしいかと」  と。  そして、アレックスはある行動に出ることを具申した。
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