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第111話 アレックスとカルロ、プランツ革命を懸念する
プランツ革命は軽く見ない方が良い。
俺はそう思った。
かつて【魔王領】で起こった革命の裏には天使共がいた。今回のプランツでの革命も連中が関わっているのかもしれないからだ。
であるならば、今この瞬間でも出来ることは全てやっておいた方が良いだろう。
「ブルレッド少佐。魔王軍幹部のアレックスです。少々、お話をしたいのですがよろしいですか? 」
ブルレッド少佐は国防軍の情報部に所属しており、【教会】内でのスパイ活動をやっていたとのことだ。もしかしたら、何か情報を持っているかもしれないと俺は思ったのである。
「アレックスさんですか。一体どうされたのでしょう? 」
「担当直入にお尋ねします。プランツで革命が起こりました。【魔王領】で起こった革命のときのように、俺は【教会】や天使共が関わっているのだと思うのです。ブルレッド少佐は、司祭として【教会】内部で活動為さっておりましたよね? 」
「確かに僕は司祭をやっていました」
「では、プランツ革命について何かご存知ではないですか」
「プランツでの革命ですか……。僕が【教会】にいた時には、そういう革命がどうという話は一切聞かなかったですね」
「そうでしたか。お時間を取らせてしまい申し訳ございません。では失礼します」
まあ、こんなもんか。
俺は直ぐレミリアのところへ小走りで戻った。
「ブルレッド少佐に話を訊きに行ってきたようですね? 」
戻ってきて早々、マリーアがそう言った。
「まあな。残念なことに収穫は無しだ。国防軍情報部の任務として【教会】でスパイ活動をしていたくらいだから、何か知っていると思ったのだがな」
「そもそも、天使や【教会】が絡んでいると決まったわけでもないですし、それに彼は国防軍という立場です。実は情報を掴んでいたものの、職務上知り得た情報ということで口外しなかったという可能性もあります」
「そうだな……」
困ったものだ。
【教会】や天使共が絡んでいたとなると、とても面倒な事になる。我々の予想に反して何をされるかと思うと、たまったものではない。
何かあってからでは遅い。
数だけでも増やしておくべきだと、俺はそう思った。
「レミリア様が率いる軍団も士気旺盛にして、質も高いかと存じます。しかしここは、あえて他の四天王率いる部隊に増援を求めるべきかと。ハインツの部下である俺が言うことではないかもしれませんが」
と、俺はレミリアに提案した。
「そうね。では早速、ハインツのところから借りようかしらね? 魔物使いの軍団だし、戦力の補充が容易だと思うしね。では早速私の方から連絡するわ」
レミリアは俺の提案を受け入れたのである。
その後、直ぐに魔物使い50名が派遣されることが決まったのであった。
※
「魔王軍幹部のアレックスは、プランツでの革命に【教会】や天使共が絡んでいると考えているようです」
ブルレッド君が小声でそう言ってきた。
「なるほど。客観的に見れば絡んでいてもおかしくはない。私も国防軍による工作であるという事実を知らなければ、そう考えていたはずだ」
レミリアも可哀想なことだ。
陥そうと思ったプランツで、革命が起こるなんて。まあ、そのまま力づくで陥すことなど容易いことではあるだろうが、そうなれば民衆からの支持はない。
風の噂ではレミリアは、併合地の住民からの支持を得させようという方針で行動しているらしい。
そういうスタンスであればあるこそ、今回の革命は頭の痛い種だろう。とはいえ、国防軍の思惑通りに事が動けば、恐らく彼女にとって決して悪いようにはならないはずだ。
「ブルレッド君。ただ懸念すべきこともある。今回の革命が国防軍の手引きによるものだとは言え、天使共や【教会】が革命に介入してくる可能性もある。そうなれば面倒だぞ」
「確かに、そうなる可能性は否定できませんね。実は市民評議会評議員の選挙が行われるとか。かつての執政評議会を思い出しますよ」
執政評議会は、【魔王領】の共和政時代の最高意思決定機関だ。その中には、天使共の息のかかった評議員が五万といたわけだが……。
「おいおい。まさにその選挙に介入されるのではないか? そうなれば市民評議会は天使共の傀儡だらけになるぞ! 」
なんと末恐ろしい。
「ええ。ただ、事に当たっている者たちも選挙には注意を払っていると思います。しかし、ありとあらゆる業務をしなければならなく激務だそうですね」
「今の私にできることは、人を送ることだけだ。ちょうど雇っている傭兵団を革命政府に預けることならできる。どうだ? 」
「よろしいのですか? 」
「まあな。ブルレッド君のほうで、うまく調整しておいてくれ」
「かしこまりました」
こうして、私は雇った傭兵団をプランツへ送ることにしたのである。
彼らは、これから度々起こるであろう≪事故≫に関わる業務に携わるのであった。
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