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第10話 目の前に現れた刺客たち
想定よりも早く、≪奴ら≫が動き出したということである。これは間違いない。私の感じる気配は≪奴ら≫の存在を示しているからだ。
元々私は、今後また起こるであろう≪奴ら≫との新たな争いに備えるために、【魔王領】へ急いでいたのである。
しかし、≪奴ら≫は私の想定よりも早く行動を開始したようだ。
私の想定では≪奴ら≫が動き出すのに、もう少し時間的猶予があると思っていた。だからこそ、勇者一行になる件も引き受けたのだが、まさかこんなにも早く動き出すとは思わなかったのである。
「カルロさん、先ほどから何か悩んでいらっしゃるようですが……どうかしました? 」
マリーアが心配したのか、そう声をかけてきた。周りを見ると、ユミやダヴィドも私の様子を窺っているようだ。
どうやら、私は皆を心配させてしまったようである。
「カルロ殿。しばらくの間、とても暗い表情をしながら一言も発せずに俯いていたが、何か深刻なことでもあったのだろうか? 」
と、ダヴィドも言う。
「カルロ! 悩んでいるなら遠慮なく相談してよね」
ユミも心配してか、そのように言ってくれた。
まだ旅が始まってから3日目だというのに、『どうもありがとう』と私は心の中で礼を言う。
だが、今私が直面していることは、本当に深刻でかつ複雑なものなのだ。
そのため、この悩みを安易に口に出すべきではない。口に出してしまうと、3人を混乱に陥れることになってしまいかねないからだ。
よって、私だけで対処する必要がある。
当然、傭兵団に協力してもらうつもりもない。これから私が対峙する予定である≪奴ら≫の正体を明かせば、流石の傭兵団も躊躇してしまうはずだからだ。
さて、ただ黙っているのも変に映るだろうしどのように誤魔化そうか……。
「あ……ううん……うっ! 」
巧い事を言おうと思ったものの、何も思い付かず、それしか声に出せなかった。
自分自身、とても情けなく思う。
「カルロ……大丈夫? ちゃんと喋れる?」
さらに心配させてしまったようだ。
とはいえ、私は3人に気をつかっている場合ではない。
「問題はない! 悩むのことは私の趣味だ」
自分でも何を言いたかったのか判らない。
しかし、3人はどう反応を返したら良いのか判断に困ったのだろうか、しばらく何も私に喋りかけてくることはなかった。
そのため私はこの間に、≪迫ってくる現実≫をどうするか、その対処方法を模索することに専念できる。
その後、馬車駅付随の宿屋に着いた私たちは早めに夕食を済ませた後、各自部屋で休むことになり今日は解散となった。
そして解散後、私は3人には気づかれないように馬車駅を発ったのである。
目指す先は≪人が一切来ないような場所≫である。
まず、これから来るであろう暗殺者共を≪人が一切来ないような場所≫まで誘導し、そして誰にも気づかれないように、こっそり始末するというのが私の作戦だからだ。
結局、思い付いた策はこれだけだったのだが……。
さて、どのレベルの奴が来るのか……。場合によっては即死もあり得る。
それを覚悟しながら、20分ほど歩くとちょうど良い森を見つけたので、その森へ入ったのである。
森に入ってからさらに20分ほどが経った。
どうやら、お待ちかねのお客さんがやって来たようである。10人前後で現れ、私を取り囲んだ。
「やっと見つけたぞ! 息子を返せ! ここで殺してやる」
1人がそう叫んだ。その者は背中に白い翼が生えており、そして頭の上にはこの者が、≪ ≪天使≫であることの最大の証明となる≪天使の輪≫がある。
他の者たちも、同じだ。
「そうか……。息子さんは死んでしまったのかね? なら、会わせてやるよ」
私はそう言った。
さらに……
「私を殺したいようだがどうやら君たちは、下級天使ではないか。これはとんだ拍子抜けだな」
と、挑発するにように続けて言った。
先程はどんなレベルの奴が来るのかまでは判らなかったが、実際にやって来たのは≪下級天使≫と呼ばれる者たちであったのだ。
これは≪天使の輪≫の色で判別できるのだが、少なくともここに来た奴ら全員の≪天使の輪≫は、≪紫色≫に光っているので下級天使である。
尚、天使の輪はその力に応じて変色していくのだ。
紫色が下級天使を示す色で、青色が中級天使を示す色である。さらに水色が上級天使を示す色であり、最後に黄金に輝く色が大天使を示す色なのだ。
そして下級天使ごときであれば、10名ほど居ようとも、私は楽に倒すことが出来るのだ。
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